静岡県伊豆周辺の沿岸風の吹く時期と名前と方角
台風にちなんで風のお話をいくつか。
1 沿岸風の名前
2 風神雷神の来た道
3 風の起こるダイナミズム
4 村上水軍航海心得記録と風
5 遣唐使全航海往来の季節円グラフ
1 沿岸風の呼び名
風には季節と地域によってさまざまな呼び名がある。
伊豆の漁師の呼び方
ならい
こち
いなせ
中西
うし
うしとら
あなし
さがにし
ぬさがだし
まだし
それぞれ季節風だが、これによって出漁日、帰還する日が決まっていた。何を捕獲するのならどの風、どの時間かまで決まっていた。
往古の人は、風がどこで生まれて、どこへゆくのかはまったく知らなかった。風の起こるシステムなどもちろん知るよしもない。これらはみな統計的な経験思考であり、もちろん気象は、そのとおりに動かず、人を裏切った。けれど人は、道教の八卦のように過去の経験則を重視するしかすべがなかったのである。
実は、それは現代でもまだそういう部分が多い。天気予報でさえ、はずれてしまうのだから。ただ科学が確率が経験則よりほんの少しだけ上回るようになったのは最近だ。予報でさえ、過去の統計から推測してゆく。しかし、統計は科学ではない。学問にはなりえないただの記録である。
だから統計学者など本当は八卦・占い師とさして変わらない存在。漁師の方がよほどあてになる。