Quantcast
Channel: 民族学伝承ひろいあげ辞典
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1881

エゴマ・荏のつく地名人名  離宮八幡神人油売りと斉藤道三とスパイ活動と

$
0
0

エゴマ

エゴマは現代日本人には馴染みが薄い植物で、よく胡麻、あるいは姿かたちからシソと混同されたり、完全に入れ替わってしまった商品もある。そしてその日本での復活が、主として韓国料理の素材としてが大きかったために、エゴマが韓国、朝鮮半島独特の植物だと勘違いされてしまったのだが、実際にはエゴマは日本自生種が縄文時代からあって、遺跡から食用・燃料用として種子が出てくる植物である。江戸時代以前は灯明油と言えば荏油だった。室町時代には幕府は荏油売り神人に通交手形不要・守護不介入を許容し、京都の混乱と引いては応仁の乱を引き起こす火種になった。


イメージ 1


「エゴマ(荏胡麻、学名:Perilla frutescens)はシソ科の一年草。シソ(青紫蘇)とは同種の変種。東南アジア原産とされる。地方名にジュウネンがあり、食べると十年長生きできるという謂れから。古名、漢名は、荏(え)。
食用または油を採るために栽培される。シソ(青紫蘇)とよく似ており、アジア全域ではシソ系統の品種が好まれる地域、エゴマ系統の品種が好まれる地域、両方が栽培される地域などが見られるが、原産地の東南アジアではシソともエゴマともつかない未分化の品種群が多く見られる。
葉などには香り成分としてペリラケトン(Perilla ketone)やエゴマケトン(Egoma ketone、3-(4-Methyl-1-oxa-3-pentenyl)furan)などの3位置換フラン化合物が含まれ、大量に摂取した反芻動物に対して毒性を示す。」Wikiエゴマ


イメージ 2

●縄文時代から栽培利用 荏地名
「日本ではインド原産のゴマよりも古くから利用されている。エゴマをはじめとするシソ属種実の検出が縄文時代早期から確認されており、1974年には長野県諏訪市の荒神山遺跡から「エゴマ種実」が検出されている。長野県では大石遺跡からもエゴマ種実が出土しており、当初は「アワ類似炭化物」とされていたが、1981年にシソ科のエゴマであると鑑定された。

縄文時代にはクッキー状炭化物からも検出されていることから食用加工されていたと考えられており、栽培植物としての観点から縄文農耕論においても注目されている。

イメージ 3



中世から鎌倉時代ごろまで、搾油用に広く栽培され、荏原など、地名に「荏」が付く場所の多くは栽培地であったことに由来する。」Wikiエゴマ

例えば荏原、荏の原、荏隅(えのくま)、荏川、油谷、油座などの地名、人名は荏生産地、生産者、あるいは油に関わる土地と人々由来である。

●荏油
「エゴマ油は種子から絞った油で荏の油(えのあぶら、えのゆ、荏油〈じんゆ〉)ともいわれ、食用に、また乾性油なので防水性を持たせる塗料として油紙、番傘などに用いられてきた。

中世末期に不乾性油の菜種油が普及するまでは日本で植物油と言えばエゴマ油であり、灯火にもこれが主に用いられ、安定的に確保、供給するために油座という組織が作られた。しかし、菜種油の普及と共に次第にエゴマ油の利用は衰退し、乾性油としての特質が不可欠な用途に限られていき、知名度は低くなっていった。しかし、朝鮮などでは、トゥルギルム(들기름)と称して日本よりも一般的に使用されつづけている。」Wikiエゴマ

●本邦製油發祥地・離宮八幡宮と「長木」
「離宮八幡宮(京都府乙訓郡大山崎町駅前)には「本邦製油發祥地」の碑が建てられています。離宮八幡宮の説明によると、「平安時代の初め、当社神主が「長木(ちょうぎ)」(絵図参照)という道具で油を絞り、灯油に用いた。これが我が国製油の始まりとされている」とあります。油は神祀(まつ)りの灯火に用いられ、また宮中に献上される、大変貴重なものでした。(中略)


イメージ 6

  弊店が創業した約200年前は、主にお灯明用の菜種油を扱っていました。荏油から菜種油へと変遷していったのには歴史的な背景を抜きにしては語れませんが、詳しくは次回に譲ることにいたしましょう。機能的な面で言えば、荏より菜種の方が栽培しやすく稲の裏作が可能だったこと、搾油しやすかったこと、明るさの点で優れていたことなどがあげられます。」
http://yoil.co.jp/a1.htm



イメージ 7


イメージ 4


●油売り斉藤道三
司馬遼太郎原作『国盗り物語』における斉藤道三の油売り「とうとうたらり とうたらり」で有名な油は荏胡麻油である。

●大山崎油座と通行税免除・天下御免の油売り→スパイの隠れ蓑代名詞
「荏胡麻の栽培・搾油・運送・卸・小売りの組合のようなものですが、 これは油関係の商売を独占的に行います。

この物品に関わるお墨付きは朝廷や室町幕府(絶頂期は三代足利義満)になされますので、誰にも文句を言われない排他的権力が保証されていました。 」

イメージ 8

 
「古来より川向うの男山、石清水八幡宮(またはこちら、こちらも)は京都の北東(鬼門)比叡山と対にある裏鬼門(南西)にあたり鎮護国家の思想から朝廷に保護され続けていました。


イメージ 9
エナガ先生のどったらこったらが面白い講義メモよりhttp://blog.livedoor.jp/myacyouen-hitorigoto/archives/38964742.html



「離宮八幡宮」は嵯峨天皇の離宮となったことからそう呼ばれていますが、もともとはその石清水八幡宮の元社と言われています。よってブログで以前「八幡宮といえば男山」と記したのは端折りすぎました。

また八幡宮は源氏の頭領必須の社寺ということもあって武士世界に移ってからもその八幡宮の権益は保護される傾向にありましたが、この「油座」というものはまさに「離宮八幡宮」の「神人」(神職・氏子)による独占的排他的事業だったわけです。

当時の「油」で思い出されるのはNHK大河ドラマの「国盗り物語」(司馬遼太郎原作)。
若き日の斉藤道三は「一介の油売り」。 永禄銭の穴に油を通す「とうとうたらーり とうたらり」のパフォーマンスとその調声がよぎります。

諸国の状況を把握できる立場にあったのが通行料自由、非課税の油屋でした。
室町幕府三代足利義満の時に油座が最盛期を迎えたというのは義満の母親が石清水八幡宮検校善法寺通清の娘の紀良子(きのよしこ)であったからと考えるのがスジのようです。
足利義満袖判御教書
八幡宮大山崎内 東限円明寺 西限
水無瀬河 依為日使大神事等重役神人
在所 自往古以来 惣所不勤公方課役也
爰以関戸院 号摂州内 成違乱云々 太不
可然 早任先例 於山崎者雖為向後諸 
事 可停止守護綺者也 就中 内殿
御燈油荏胡麻諸関津料并兵庫嶋
升米以下 固可止其妨状 下知如件
   明徳三年十二月廿六日
 

●神人(じにん)と油
さてここで出てきた神人とは神社の祭祀や細かい仕事、販売促進なんぞに勝手に関わった氏子のことだが、諸君後存知の通り、あえて「神人」と言った場合それは多くが下層民の犬神人(いぬじにん)のことで、神社境内に巣食う無頼の徒である。

イメージ 5


よく言えば自由人、遊興人、あるいは芸人、歌舞音曲・・・と言うと聞こえはいいが、要するに無宿者、ならずもの、テキヤ、阿弥、こじき坊主といった類の、いうならば当時では無為徒食の被差別者。その中にはまあスパイや忍びの者、修験者などなどまで紛れ込む。で、油売りにかこつけて都や大阪や尾張を探っていたのが大名斎藤道三だったというのが司馬さんの設定である。境内には大道芸や芝居の小屋も立つことから、変装道具には事欠かない。有象無象のやからがわいわいしていれば、少々怪しいやつがいたってまぎれこんでしまう。っていうよりも、神人なんて全員
がちょっと怪しいやつばかりである。まともな奴のほうが目立ってしまう。

書状にある通り、足利義満が離宮八幡宮や岩清水八幡宮、あるいは酒解神社などの神人油売りに対して、守護の不介入を許可したために、以後、これに身をやつしての京都潜入がたやすくなってしまう。その結果、京都は諜報活動丸裸となってしまい、やがてそれによって宮中内部大名内部も情報過多の疑心暗鬼。ついに応仁・文明の乱が勃発し京都だけでなく、その影響で全国の流通都市で荒廃が。やがて織田信長の「楽市楽座」による商業慣習打破(為政者による商行為把握と租税徴収)による独占権威失墜と菜種油の登場によって荏ゴマ油は完全衰微してゆくのだった。

エゴマの栽培と渡来には特に関わりなし。
あると思って調べてみたが、なにしろインド由来のゴマよりももっともっと古い縄文時代からエゴマはあるので、特に渡来人の持ち込みはなかったようだ。栽培適地も特になく、冷涼であればどこでも育つ。それに長期間日本に存在したので、地域格差にもよく適合していて、場所によって育ちやすい品種が存在する。

筆者の近在には荏隅地名がある。大きな河川の下流で、往古よく氾濫の起きた湿地帯だった地域である。あまりよくない土地だったせいか刑務所や自動車試験場があったりするが、往古は湿地を利した農業が盛んで、レンコン、荏ゴマ、桑などの農家が多かったらしい。一帯には古墳が点在し、前方後円墳後円墳も一基ある。西部河岸段丘麓には「餅田」地名があり、秦氏・鴨氏・三輪氏共通の白鳥伝説・朝日長者伝説との関係も考えられる。



Viewing all articles
Browse latest Browse all 1881

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>