さて、前回提示した回答を得た29カ国の中で、いよいよ馬を実際に食べている国です。
- スイス
- スペイン
- タヒチ(フランス領ポリネシア)
- ドイツ(食べることもあるが、非常に稀)
- ハンガリー
- フィンランド
- フランス
- モロッコ
- 中国
- 南アフリカ共和国
が、馬を食べています。
どこにも騎馬遊牧民国家はないようです。
話変わって、ではイヌを食べる国と比較してみましょう。
イヌを食べるのは、
韓国
カンボジア
タイ
タヒチ(フランス領ポリネシア)
フィリピン
ベトナム
ラオス
中国
このサイトには韓国を調べていないですが、世界的にも韓国朝鮮民族が、かつて(韓国ではソウル五輪まで。北朝鮮は不明)犬鍋を食べることはよく知られた話です。とにかく非常に「好んで食べていた」「避暑の薬(うなぎみたいに)として食べた」のは朝鮮民族と漢民族でした。韓国のゲ・タンですね。犬湯。イヌのスープの意味。それがソウル五輪からサムゲタン(鶏を代用する)に変わりました。
中国人は「四足は机以外、二本足はわが子以外は、なんでも食べる」という民族ですので、ここでははずしておきましょう。
すると馬食と犬食ともにしている国はないのに気がつきます。
日本の弥生時代にはイヌを食べた痕跡があります。しかし縄文人にはなく、むしろ丁重に埋葬してあり、これは古代史をやっている人には常識です。
縄文人が北方系のオロチョンやアイヌの血脈の人々なら、これは実に整合性があります。騎馬民族、遊牧民は馬もイヌもたべないのです。
どうしてでしょうか?
犬と縄文人ははっきりしています。
狩猟の相棒で家族だったからでしょう。
すると騎馬民族には馬は家族だったんだろうなと気がつきますね。
こうして言えることは、世界で家畜を家族に思う人々には、それを食べた形跡がない。しかしそうでない地域のいくらかに食べる人がいる。
これはなぜか?
ひとつは、その地域の気象環境が厳しく、緊急時には仕方なく食べるしかなかった可能性です。すると、なぜ今でもまだ食べるのかという疑念が生まれます。
日本で、熊本県民や福島県民に、あなたはなぜ馬を食べるんですか?イヌも食べますか?虫も食べますか?とはなかなか聞けません。
食べてみればわかりますが、馬は確かにうまいのです。イヌは食べたことがありません。とてもうまいとは思えませんね。でも馬は牛よりうまいと感じます。それにヘルシーなようです。
熊本や福島がかつて裕福な地域だったとは思えません。面白いのは熊本では赤牛が有名ですが、黒毛和牛のようにはうまくはなく、最近は黒毛和牛を育てる牧畜業者が増えています。どうも牛を食べる風習が遅く入ったのではなかろうか?長年馬を食べていたからかもしれません。
黒毛和牛は、どこの和牛だろうと大元は但馬牛です。いわゆるブランド名で言うなら神戸牛なのです。全部です。その血を引いています。
しかし馬肉にはそういう血統があるのかどうかは知りません。
「 馬肉・馬刺しを食べる文化が広まったのは、肥後熊本藩初代藩主の加藤清正にルーツであるという熊本県の俗説が有力です。
400年前の文禄・慶長の役当時に豊臣秀吉との朝鮮出兵で大陸に渡った際、食糧が底をつき、やむを得ず軍馬を食した事が発端となりました。
帰国後も好んで馬刺しを食べたことから領地である熊本で馬刺しを食べる文化が根付き、全国へと広まったとされています。」
これが真実かどうか、わたしは知りません。
「いまからおよそ5千年前、それまでは食糧として狩猟の対象であった馬の家畜化が始まりました。
それは、人が馬の速く走る能力や持久力に着目し、輸送・移動の手段として利用するようになったからであり、その結果、人は大量の物資を遠くまで運搬する事が出来るようになりました。
馬は常に人間生活の最前線にその地位を占め、荒地を開拓し、広い農地を耕作し、馬は人類の文明発展に大きく影響しているのです。」同上サイト
しかし、騎馬遊牧民は羊は食べますが、馬は食べません。馬は太陽神への捧げ物でした。神へささげるのは、前にも書いたとおり、太陽は足が速いとされ、だから足が速い馬を捧げたのでした。
一方、魏志倭人伝には、倭人の国には牛馬なし、と書かれています。あとじゃら輸入したわけです。それが馬を食べています。そして牛馬はやはり神へ捧げました。でも、遊牧民と違うのは、それは西欧的な生贄としの首だけです。そこには遊牧民のような、馬の首を落としても、足を上にして埋葬すれば、天国で元に戻って生き返るという、縄文人的着想は感じられません。
動物の首だけ捧げるのは、非常に南島や中国少数民族の風習に似ています。あるいは首狩り族は、戦いで敵首領や勇者の首にこだわってうばいます。理由は、頭にはその人の魂や勇気が集まっているからだといいます。それを狩ってきて、村落や家の入り口に置きます。つまり魔よけにします。霊力があるわけです。
日本では、武家がいくさで敵将の鳩首にこだわりましたね。同じでしょう。
つまり首狩りは北方ではなく、南方的な風習です。
ところが馬を食べていない。イヌもカンボジアやフィリピンだけです。
南島や江南には犬を祖とする神話があふれており、犬は食べるはずはないのです。しかし馬も食べていません。
なぜでしょう?
考え付くのはケルトかも知れないとなりますが、はっきりしません。ケルト民族に馬食風習があったとしても、それでは日本の馬食にはつながりません。
この分析は、馬を喰う熊本や福島の民族学・民俗学・食料学こそがやるべき難問です。ぼくはここまでにしておきます。食べる人たちが自分で解くべき宿題です。
タブーにすることはないです。学問ですから。
ぼくも熊本の馬肉はうまいと思いますけどね。
背脂の刺身を人吉で食べたときは、目からうろこでした。