久しく熊本県のチブサン古墳壁画の赤と白と群青の菱形模様の何に由来するか、がわからなかった。しかし今日それがようやく、数十年の悩みだったそのデザインの意味がわかったのである。
水銀は切り取った鉱石から、やがて滲み出て、酸化して赤くなる。
それが結晶化して不思議な形状の模様ができる。
菱形である。
そうか、これだったのだ。
円紋は乳房でもなく、目でもなく、水銀の「滴 つぶ」だったのだ。
十年前、筆者は熊本県の小国町のバス停に「滴玉」地名を見ている。
昭和初期まで銅山があったのが小国であり、この滴玉は水銀地名だとちゃんと書いた覚えがある。金属鉱石は水銀に含まれているから、鉱山師たちはまずは水銀=辰砂鉱石の脈を探すのだとも、ちゃんと書いたのに、辰砂鉱石そのもの姿かたちをちゃんと調べてこなかった。
それが『世界史を変えた50の鉱物』にちゃんと画像があった。
左下にちゃんと「滴玉」がある。
水銀は鉱石から滲み出ると玉になる。
まるで真珠のようだ。
これも中学の理科でちゃんと習っていたし、現物も見たのだ。
ああ・・・それがこの画像でやっと、すべてが結びついた。
何十年もの疑問がようやく解けた。
チブサン古墳壁画の菱形アーガイル模様と、その三色と目玉の意味が。
なんとういう偶然だろう。天啓だった。
今日、返却しようとして外出し、バスの待ち時間に偶然、この本を手に取り、開いたページにこれがあったのである。
うん?これはどこかで見た・・・
そうだ、もう何度も何度も通い詰めてきたチブサン古墳壁画ではないか。
なんという邂逅だったことだろう。
神はぼくの悩みを見捨てなかった。