世界四大文明とは、東アジアで生まれた東アジアだけの古い世界観、歴史観の用語。
発案者は中国清末~民初期の政治家である梁 啓超(りょう けいちょう)。
歴史上、4つの大文明(メソポタミア・エジプト・インダス・黄河)が最初に太古(ほぼ4000年前前後)に「常に大河流域で」起こり、以降の文明はこの流れをくむとする仮説。シュメール、長江などの旧大陸内のさらに古い文明の新発見、アンデス、マヤ、インカ、アステカなどの新大陸文明が発見される以前の古い仮説。
いまや日本の高等教育のみに残存するとも言える狭い、学校教育によって日本人のほとんどに刷り込まれている誤った史観である。現在は「六大文明」とする仮説が歴史学者・専門家たちの新しい仮説になっている。しかしそれももちろん便宜的な仮説であって、今後、新たな文明の発見もありえるし、そもそも「四大」「六大」などと決め付けたがる志向は、世界では日本人や中国人だけの考え方である。六大とは人によって選択肢が違い、四大文明にプラスして、地中海地域の各文明、新大陸の各文明をひとからげにしたくくりでしかない。
世界六大文明派生地
池上彰と歩くアフリカビジネスサイトより「世界六大文明」分布図
ここですらタイトルはやはり四大文明となっている。
※そもそも日本人は「三大なんたら」が大好きだが、実はそういうくくりは西欧にはまったく存在しない。なんにでも順位をつけたがるのは日本人の奇妙な偏向である。そこには世界・民族を平等に観ようとする世界観が皆無で、すべてに順列、上下を求める悪い性癖だと言え、そこに日本人、東アジア人の西欧的な「平等」への理解度の低さが垣間見える。
世界に古代文明とされてる地域は、今現在約40箇所存在する。
古代文明一覧
四大文明より前、直後に派生した世界古代文明(四大文明含む。古い順。小文字は未だ不確定)
●シュメール文明
イラク・クウェート 中石器時代~3500年頃。中石器、新石器、ハラド、ウバイド文化など
●シュメール文明
イラク・クウェート 中石器時代~3500年頃。中石器、新石器、ハラド、ウバイド文化など
●縄文文明(仮説) 日本。16000年前~? 土器、円の思想。木造高層建造物。貝塚。
いずれはあったとされるだろう。日本文明という仮説が欧米ですでに出てきている。
文明と呼べるための要素はまだ不明。
いずれはあったとされるだろう。日本文明という仮説が欧米ですでに出てきている。
文明と呼べるための要素はまだ不明。
●長江文明
紀元前14000年~紀元前1000年頃 中国長江流域 稲作、彭頭山文化、大渓文化、屈家嶺文化、屈家嶺文化、石家河文化、河姆渡文化、 馬家浜文化、沢文化、良渚文化、呉城文化など
●黄河文明
黄河流域~中原~江南 紀元前7000年頃
裴李崗文化、老官台文化、北辛文化、磁山文化、仰韶文化、後岡文化、大汶口文化、龍山文化、二里頭文化などの各文化。
●メソポタミア文明(含むアナトリア文明=アッシリア・ヒッタイト・バビロニア文化紀元前5000以降)
イラクチグリス・ユーフラテス川の間の平野 紀元前5000年~紀元前500年頃。楔形文字・粘土板。太陰太陽暦、60進数
●アンデス文明 (ラテン・アメリカ文明)
南米のペルーを中心としたアンデス中央高地 紀元前5000年ごろ。キープ文字(縄を括る文字代わりにする)。絵文字。金属器なし。石器文化。金や銀は装飾品のみではじまりは遅い。
●エジプト文明
エジプト・ナイル川周辺 紀元前3000年~紀元前30年頃 太陽暦 文字ヒエログリフ(甲骨文字)。天文観測、測量、幾何学
エジプト・ナイル川周辺 紀元前3000年~紀元前30年頃 太陽暦 文字ヒエログリフ(甲骨文字)。天文観測、測量、幾何学
●インダス文明
インダス川と、ガッガル・ハークラー川周辺。 紀元前2600年~紀元前1800年頃。特徴青銅器、日干し煉瓦建築 都市ハラッパー、モヘンジョダロ
●マヤ文明 (メソ・アメリカ文明)
メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、ユカタン半島 紀元前2000頃?~16世紀植民地主義スペインによって滅亡。青銅器や鉄器を使用せず、食用・役用の家畜なし。焼き畑農業。天体観測天文学・数学・暦。象形絵文字。 はじまりはまだ不明。
メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、ユカタン半島 紀元前2000頃?~16世紀植民地主義スペインによって滅亡。青銅器や鉄器を使用せず、食用・役用の家畜なし。焼き畑農業。天体観測天文学・数学・暦。象形絵文字。 はじまりはまだ不明。
※メソとはラテン語の「中間地域」
このほかに、原始フン民族やケルト民族、原始中東~イラン、スキタイなども筆者今後の候補。
例えば日本の教科書では、マヤ・アステカなどのメソ・アメリカ文明にもいろいろあるのに、距離で1000キロ以上離れたラテンアメリカのアンデス各文明をも1セクション、1項目で十把ひとからげにまとめてしまい、わずかなページしか割かない有様で、シュメールについても同じ。ましてフン族の始まりや好事家たちが興味津々のケルトなどはまったく書かれない。まことに世界の歴史観からの遅れが未だに観られる。受験用史学ここにきわまれり状態。
あたかも西欧文明と四大文明さえおさえておけば世界史は終わってよいという、キリスト教徒のようなカリキュラムがいまだに続いている。これは古い西欧史観というよりも、戦時中の中華思想の受け売りのままだとすらいい得る状態である。さらに大学受験に出てくる問題にも、バルカンや新大陸の新発見文明は割愛の傾向が強く、日本人全体の世界観・歴史観を世界が「?」する原因を作っている。しかもマヤ・アステカなどの文明には大河は必ずしも関与していない場合も多く、さらに金属器の使用例が皆無である。つまり四大文明的なくくりにはあてはまらないのに明らかに文明なのである。くくりが通用しないから例外扱いか?
これらの中南米文明の多くは、つまり、発見の遅れた隔絶地域だったために、10世紀前後まで「石器~青銅器~鉄器」という西欧考古学の進歩の定義があてはまらず、石器と土器を使い続けた旧世界であるにも関わらず天文や数学にたけた文化が根付き、農耕も高山斜面を利する棚田が中心の、狭い地域、高い高地で延々と(縄文文化のごとく)それが続いたということになる。また、われわれが彼らの死生観を語るとき常に代表的に考える「生贄儀式」ですら、マヤ人やアステカ人やマチュピチュ人らは、特別な場合しか、ほとんどまれにしかそれを行ってはいないことについてすら知らないままなのである。
「世界の文明は四大文明ではない」(青山和夫 『マヤ文明を知る事典』2015)
もちろん世界の文明の始まりも四大文明からではない。
今年、史上初めて南米でオリンピックが開催されるわけだが、その新大陸の各文明が、それぞれいつ始まり、それぞれが中南米のどこに存在したかについてすら、日本人の多くは充分に知っているとは言えない。(中南米文明一覧と始まりは別記記事にする)
あまつさえ、ネット上に、今のところ世界中の古代文明派生地の分布図すら見当たらない。インターネットの情報は「木や枝葉には詳しいが、相対的、包括的、俯瞰的な森林がない」。あるのは詳しすぎる断片ばかりで初心者には役に立たないものが多いのである。だから筆者はいつも自分で一覧や分布図を作ることになる。労力ばかりかかる。
つまり日本人の中で、すべての世界古代文明を総覧している人間がひとりもいないということになりかねない。あるのは四大文明分布図や文明ごとの狭い分布図だけ。「古代文明」「世界文明」で検索すると常に最上段に「四大文明」が出てきてしまう。それほど日本人は「四大文明」史観に束縛され、馴致されてしまっているわけであろう。
もう一度言うが、最も古い世界文明派生地は四大文明派生地ではないのだ。そして教科書の文明派生の項目もすみやかに書き換えるべきである。でないと、日本人はいつまでも世界的視野の歴史観や、グローバルで平等な世界観を持てない欠陥民族のままである。テレビの特集番組でしか教科書の外に有る最新世界文明を知ることができないとは、まことに残念な話ではないか。