モノとコト
もの【物・者】一 〔名〕≪形があって手に触れることのできる物体をはじめとして、広く出来事一般まで、人間が対象として感知・認識しうるものすべて。コトが時間の経過とともに進行する行為をいうのが原義であるに対して、モノは推移変動の観念を含まない。むしろ、変動のない対象の意から転じて、既定の事実、避けがたいさだめ、不変の慣習・法則の意を表わす。
もの【物・者】一 〔名〕≪形があって手に触れることのできる物体をはじめとして、広く出来事一般まで、人間が対象として感知・認識しうるものすべて。コトが時間の経過とともに進行する行為をいうのが原義であるに対して、モノは推移変動の観念を含まない。むしろ、変動のない対象の意から転じて、既定の事実、避けがたいさだめ、不変の慣習・法則の意を表わす。
こと【言・事】一 〔名〕≪古代社会では口に出したコト(言)は、そのままコト(事実・事柄)を意味したし、またコト(出来事・行為)は、そのままコト(言)として表現されると信じられていた。それで、言と事とは未分化で、両方ともコトという一つの単語で把握された。従って奈良・平安時代のコトの中にも、言の意か事の意か、よく区別できないものがある。しかし、言と事とが観念の中で次第に分離される奈良時代以後に至ると、コト(言)はコトバ、コトノハといわれることが多くなり、コト(事)とは別になった。コト(事)は、人と人、人と物とのかかわり合いによって、時間的に展開・進行する出来事、事件などをいう。時間的に不変の存在をモノという。後世コトとモノとは、形式的に使われるようになって混同する場合も生じて来た
岩波書店『古語辞典』(補訂版)
岩波書店『古語辞典』(補訂版)
考古学上のモノからコトへの変化
考古学は発生当初は事物の形状による分類に邁進していた。それは事物をモノとして考える段階で、あくまで理科系的な科学でしかない。それで昨今は、事物に伴う色彩や観念、死生観などのコトの分析が重視されるように進化し始めている。
それは科学がおのれの不足部分、シェイプだけでは説明できない、人間的な、つまりより現実の歴史によりそった文科系的な分析を必要だと気がついたからであろう。
たとえば中国の伝説上の生き物である「辟邪」はなぜ赤いとされていたのかと考えると、赤が魔よけの色だったことに気づくはず。これまで考古学者はなぜ赤か?をあまり考えないままやってきた。しかし赤という色にちゃんと意味や観念があることにやっと気がついたということだろう。
そこから環境考古学や景観考古学、考古心理学などなど、無数の考える余地が生まれてきた。
科学はインナートリップは得意だが、アウタートリップがへたくそな学問である。