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由布市塚原側にある鶴見伽藍岳噴火口。「日本三代実録」貞観11年冒頭で噴火した。そこから東北の大震災・大津波そして肥後震災記事が書き始められる。Clik here to view.

筆者は今回に限らず、自分自身に危険が及ぶかも知れない事態に放り込まれても、いつもこのブログの中では、冷静に、客観的に、その状況の危険度についての被災者への警告と最良の避難喚起を内在させながら災害に関する記事を書いているつもりでいる。前回の福島についてもそうだったが、あくまでもその状況は住んでいる当事者のみなさまにとって極めて危険だから逃げて欲しいということを言ってきたつもりである。
それが風評という種類の言葉の暴力だとは思っていない。危険はとりあえず避けるのが正しく、そのためにはいくらかの大げさな表現を用いたほうが効果があると思う。
ただ、客観的な分析の結果が危険を導き出し、そのことをここに激しく書いて当事者へ喚起することと、マスコミなどがテレビの劇的視覚効果のために、いままさに崩落しようとする絶壁の家の下で待ち構えるような客観性とは、違うと思う。
昨夜、ミヤネ屋かなんかの最後に、司会のミヤネ氏は心情からだろうこういうことを言った。
「熊本のみなさんには、一旦九州から出てでも、災害の治まるのを待って、再起を考えていただきたい!」
この言葉には正解と誤解が入り混じっているなと、九州に実際に住んでいる筆者は感じた。
「九州から出て」とはこの地震がどこが危険であるかを充分に考えていない言葉だと感じたのである。まるで九州全土が危険地帯・・・と言ったように感じたのである。しかしそうではない。今回の地震ほど、危険な地域が明確な地震はなく、それは中央構造線のうちの九州島で最も新しい隆起地帯内部でしか震源地を持っていない地震である。
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その最も新しい隆起帯とは、阿蘇山を中心とする「中央構造線領家変成帯と秩父帯の二本のライン上」である。この地図ではピンク色と薄緑色の二ヶ所だけで地震は発生しているのであり、それ以外の南北の「数億年も古く安定した地域」では、地震は一切発生しておらず、揺れが震源から伝播しているだけだということをちゃんと認識してくれねば困る。つまり真ん中は非常に危険度が高いが、両端地域は揺れはするが概して危険度が低いのだという認識があれば、「九州から出て」というような言葉は安易に使って欲しくない、そう感じたのである。
福島のときは、あそこに原発があり、それが実害を受けた。だから「早くそこから逃げなさい!」と自分は書いた。それはまさに警告である。いかに原発、放射線が危険かを知っていればこそ、あるいは未知の存在であるからこそ、とりあえず危険地帯から出なさいと書いたのだ。なぜなら、「君子は危うきに近寄らず」は災害忌避の常識だからだ。そこには「早く故郷を捨てなさい」という意味はまったくなく、いずれまた帰ればいいじゃないか、とりあえず今は逃げろという気持ちからだった。ミヤネ氏の言葉にももちろんそういう心情は見える。しかし、今回は原発に問題が無く、しかも九州の南北地帯は安全なのである。九州全体が「もうだめだ」にはなってはいないし、熊本県も大分県もちゃんと安全な土地が存在しているのである。九州から出る必要など、現時点ではまだ起こってはいない。それだけは書いておく。
さて、筆者のいる大分市は今、たまに「どん!」と揺れてはいるが、熊本や由布院に比べれば天国のように安全である。だから、これまでこの地震について書いてきたことを見直し、再考しはじめる余裕がある。これは幸福なことである。たまたま、断層帯からはずれた場所にいたために、大災害から逃れられている。まことに被災地の諸氏にはすまないことだが、おかげで記事も書ける。
このブログは、いつも書くように、できるだけ主観を排除して、差別意識や旧来の左右の歴史観も排除して、客観的に分析するを建前に作った。ということは、それまでの筆者は、ほかの一般の日本人とかわらない、主観、心情でものごとや歴史を考えていた人だったということなのである。だからあえて、心情を殺してそうした。つまり筆者の心情と、ここに書く客観、冷徹な分析とはぼく自身の中ではっきりと区別してあるということだ。「おまえ、こんな非常時に分析なんかして、冷たい奴だなあ」というのは誤解である。それを押し殺して「なぜ」そして「どうなる」を考えておかねば人は右往左往するしかなくなる。いつも自分が立っている現実から少しはなれて、冷静に俯瞰する鳥の目が同時になければ、ぼくも婦女子のごとく泣き喚き、世をはかなんでさまようしかなくなってしまう。男とはそういう生き方は絶対してはならない立場にある生き物であろう。常に家族のために客観的でなければだまされ、うそにのみこまれる。結果が間違ってしまっても、その考えで生きていくなら、それは間違いではないのだ。
そこで今回の地震の今と明日についてまた考え始めることにした。
今日も、昨夜も、いまだに地震は続いている。
昨夜遅く、別府市で震度3の軽い地震が起こった。寝ようとしていた筆者は、これまでで一番「これはまずいな」と考えた。
別府は湯布院から続く複数の活断層地帯で、その活断層帯は別府湾から四国の愛媛へと続くのである。そこに伊方原発がある。現在再稼動のための試運転中である。40年から30年ほどの時間がたった原発で、一基は先日再稼動が中止になったが、ほかの二基は作業中である。つまり危険な原発である。もしこれがなにかあると、場所が瀬戸内海で、海流は外海に出にくい立地である。しかも今回の熊本・阿蘇・湯布院が立地する領家変成帯の上に伊方原発は立っている。ここが漏れたら、瀬戸内海の海産物は一度に大打撃を受けることになる。魚だけではない、日本の往古からの重要産物である天然塩なども打撃を受ける。西日本全体の食の安全が崩壊するのである。なぜここに原発が作られたのか、そのころ関西にいた自分にはあずかり知らないことだった。
だから筆者は、マスコミも扱わない別府の動向が最も気になっている。
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塚原側には温泉が湧く。塚原温泉である。
『日本三代実録』貞観11年記事にまずあるのが、別府の鶴見伽藍岳の噴火である。貞観の大災害はここから書き始められていることが重要である。これは今の熊本・大分地震と同じ断層帯上で、貞観では鶴見から熊本へ南下するに対して、今回は正反対に熊本から発して阿蘇、湯布院、別府と、震源地が北上している。貞観のときには真ん中の阿蘇についてはまったく記述が無いから、今の地震のほうがその規模が大きいのである。
また、17日には南米でプレート玉突きによる震度の大きな大地震が起こり、今朝には福島沖が小さいが揺れている。この三角を描く伝播のルートは、数学的に計算可能な地震伝播の距離と時間と場所推定を可能にする。
熊本で突かれた玉は南米へ突き当たり跳ね返って福島沖に戻った。まさにそこがこの地震連鎖の起点である東北大震災の起きた地点なのだ。この玉は、今後、力と速さを弱めながら、この三角形の線上をいつまでも進むだろう。いずれは収束することだろう。それはぼくの願い、あなたの願いではある。
しかし、そういうきっかけで、いったいどこで再び勢力を吹き返すか誰にもわからない。地震学者にもわからない。科学者にもわからない。ヒントは記録しかない。
だから鶴見伽藍岳が噴火したときは、ぼくは覚悟がいるなと考えているわけである。
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手前が別府市猪瀬戸、城嶋(きじま)高原。上が由布市塚原高原、その先は宇佐市と瀬戸内海周防(すおう)灘。手前にある鳥居が貞観記事にある火男火売女神社か?右上が別府明礬(みょうばん)温泉と別府温泉街。すぐ左が湯布院町と由布岳。別府湾は右上の先。四国は右上の先。筆者の家は右へ20キロあたりにある。そこから巨大な別府湾活断層が愛媛伊方にまっすぐ伸びる。ここが噴火すると、再び熊本に巨大な揺れが伝わり、阿蘇山、九重山硫黄山が活動し、中世に起こった瓜生島沈没大災害が再来する可能性が出てくる。
祈るしかない。
平安の大宮人たちも、まずここの火の神に平穏を祈願した。
それしかないのだ、今でも。
中国人など、地震の少ない国々の観光客が減るのは仕方が無い。日本人もしばらくは九州全部を避けるだろう。しかし震災は貞観以来の出来事だ。収まればまた安定する。1000年間安全だったのだ。1000年安定な場所でもこうなる。いわんやほかの地域をや。これは対岸の火事ではない。同じ変成帯にのっかるすべての列島にその可能性がある。忘れないようにね。