熊本地震によって、レリーフや彩色で内部を飾った希少な装飾古墳に被害が出ている。熊本県内の自治体が調べたところ、少なくとも10基で確認された。特殊な文様で知られる国指定史跡の井寺(いでら)古墳(嘉島町)は、墳丘の土に亀裂が入り、崩れる恐れがあるという。
全国の古墳約20万基のうち、装飾古墳は650基ほど。熊本県には最多の195基が集中している。
井寺古墳(5世紀後半~6世紀初頭)は、江戸末期の地震で土に隠れていた通路が現れて、見つかったとされる。直径25メートル、高さ5メートルほどの円形で、内部は直線、弧線、同心円の文様が施されている。
町によると、墳丘に幅30センチほどのYの字の亀裂が入り、割れ目から石が露出した。石室の可能性がある。入り口に取り付けた金属製の扉に内部の石材がもたれかかっており、開けると崩れ落ちる恐れがあるという。
このほか、国指定史跡の釜尾(かまお)古墳(熊本市)、オブサン古墳(山鹿市)、県指定史跡の御霊塚古墳(同)などでも亀裂や天井の石材が落ちるといった被害があった。県文化課は「余震で危ないため、内部の詳しい確認はできていない」という。
朝日新聞
まことに惨憺たる状況に言葉もない。
想像はしていたが、これほど厳しい状況になっているとは。
日本オリジナルの装飾は、あの東日本大震災でも双葉町の横穴装飾墓群にも大きな爪あとを残した。装飾古墳は熊本県が日本最大の保有数だが、壁画があるという魅力で九州考古学ファンは旧知のもので、それ以外の古墳は目立たないけれど、もっと多く、その被害状況もこれから調査がされていけば、古墳全体、遺跡全体の被害はもうはかり知れないことになるだろう。大分県の西部、日田市にも多くの古墳、装飾、遺跡が集中する。これもまたどうなったかも気になる。
いずれ装飾古墳今昔紀行の蕨手さんが、その状況を直接つぶさに見てこられるはずだ。待つしかない。心配したように井寺古墳の秀麗な石室も甚大な破損を引き起こしたようだ。残念極まりない。
明日から筆者現役社会人に復帰しますので、記事更新が少なくなるかも知れません。