あさとち狂ってなぜか遠い神社へ向かう
目的は中央のほの萌黄色の中腹
一年ぶりに異界への暗所をくぐった
いきなりの異界にややたじろぐ
しらとり連れ立ち
わがおびえを感じ取りしか
やにわに高崎山へ飛び去る
葛城ノ庄は諏訪の山へ
由布より流れ来る賀来川を渡る
朝狂って 吉増剛造
ぼくは詩を書く
第一行目を書く
彫刻刀が、朝狂って、立ち上がる
それがぼくの正義だ!
一九六六年九月二十四日朝
ぼくは親しい友人に手紙を書いた
原罪について
完全犯罪と知識の絶滅法について
アア コレワ
なんという、薄紅色の掌にころがる水滴
珈琲皿ニ映ル乳房ヨ!
転落デキナイヨー!
剣の上をツツッと走ったが、消えないぞ世界!
(黄金詩篇より)
第一行目を書く
彫刻刀が、朝狂って、立ち上がる
それがぼくの正義だ!
朝焼けや乳房が美しいとはかぎらない
美が第一とはかぎらない
全音楽はウソッぱちだ!
ああ なによりも、花という、花を閉鎖して、転落することだ!
美が第一とはかぎらない
全音楽はウソッぱちだ!
ああ なによりも、花という、花を閉鎖して、転落することだ!
一九六六年九月二十四日朝
ぼくは親しい友人に手紙を書いた
原罪について
完全犯罪と知識の絶滅法について
アア コレワ
なんという、薄紅色の掌にころがる水滴
珈琲皿ニ映ル乳房ヨ!
転落デキナイヨー!
剣の上をツツッと走ったが、消えないぞ世界!
(黄金詩篇より)
山の切通し登ればあやかしの廃屋ありて
ずどーーーーんと
わが胸を
ぶっこわすほど打ちつけてしらぬ顔で佇まう
ひたすら
ただ登る
やがてそれが見えてくる
この杜を諏訪と呼ぶは
いにしえ
科野より葛城ノ民人多数入り
ゆえに城主
こを
葛城ノ諏訪の杜と呼ぶ
一族の鎮守とす
ゆえに庄に住むものすべてが葛城を名乗る
かづらきの
出雲をいでて三千年
信濃を出でて二千年
大和を出でてはや千年
ついには筑紫へ戻りたり
そは本貫の故郷なり
一族の好む景色である
すべての葛城を見てくればすぐにわかる