久しぶりに民俗学的記事を。
アジール ドイツ語 asyl フランス語 同じく 英語 asylumアサイラム
犯罪者、奴隷、負債者、逃亡者、不法移住者、不法渡来難民、などなどが逃げ込んだ場合に保護を得られる「聖域」、避難所、聖庇(せいひ)。
世界各地で、寺院や聖地、墓場、神社境内、河川沿岸、海岸部などにあるが、法体系の整備とともに失効したところがほとんど。
日本では主に江戸時代に、「逃げ込み寺」のような一定の「追及の及ばぬ聖域」があった。民俗学的には広義に使用するケースがあって、法の埒外の無法地帯である。中世から職をなくした芸能民や宮大工、あるいはらい病などの特定の病人、鉱山鉱毒で汚染された患者などが集まった、集められた地区もアジールと呼ばれることがある。
埼玉県某所の横穴墓群
ある理由から、例えば幽谷、山頂、あるいは古代の古墳や、廃れて使用されなくなった鉱山の間歩(まぶ)穴、トンネルなどをねぐらにして漂泊民などが住み着くと、そこはアジールとなる傾向にある。神社の境内などは古代からすでに遊興民らが集まる場所だった。
それはそうされたものから見ると「差別」だっただろうか?反対にそうする側からは「区別」だったのだろうか?差別と区別を、最近混同する意見が増えている気がしている。どう違うかを考えることは、実は歴史にとって非常に重要な考察かも知れない。そういうことをこれから少し書いてみたい。