鉄は簡単にすませることができない鉱物
世界史を変えた鉱物はいよいよ鉄を扱うことになるが、鉄はあまりに幅広く、1記事にまとめるのは難しいアイテムである。ただ、このブログは過去、何度も鉄について記事にしている。このブログの書庫に「鉱物・鉱脈・植物・動物分析」カテゴリーがあり、一覧の中で最も多いのが鉄に関する記事である。
「理化学分析」書庫にもいくつか鉄記事がある。
今回鉄記事をまとめるとすれば、これまで書かなかった新発見だけにとどめておくのがいいと考えている。それでなくても鉄に詳しい人は多い。一家言ある好事家は、総じて文句ばかり書いてくるからね。中途半端な知識はいらないのだが。見せびらかしたいのかしらねえ・・・自己顕示欲ってものはもう・・・。
1 人類最初のアナトリアの鉄剣素材は隕鉄ではなく鉄鋼(はがね)だったこと
2 デリーの鉄柱が錆びない理由
※鉄鋼であるなら合金、クロムやニッケルが混じっている。
たまはがねなら砂鉄を使う。
これ以外について知りたいなら、上記過去記事一覧からどうぞ。
世間の古代史好事家たちにものを申すなら、鉄の歴史に詳しい人は鉄の構造には無頓着。化学に詳しい人は歴史に無頓着であることが多い。しかし両方知らなければ、彼らの意見は「かたわのたわごと」でしかあるまい?
「アナトリア Anatolia のキュルテペ Kültepe 出土の粘土板文書(紀元前2000年頃)によれば、アムートゥの価値は金の八倍、銀の四十倍であったと言う。
そのアムートゥの鉄を世界に拡散させたのはアッシリア人である。カネシュのカールムで購入していた。エーゲ海から世界へという製鉄技術の歴史視点は、今後はもっと歴史学にとって重要になるだろう。
ただの鉄がこれほど高価だった理由のひとつに、それが隕鉄だったからではないかという魅力的な説がある。隕石に含まれる鉄の特徴に、高いニッケル含有率がある。しかし、これまで鉄鉱石分析では、ニッケル成分まで分析したデータがないので、比較できないという困ったところがある。」
あのカッパドキアで有名なバルカン半島アナトリア地方は、かつて鉄の国家ヒッタイト帝国(聖書のモーゼの出アフリカ記に出てくるヘテ人のこと)があって、これまで世界最古の隕鉄で製鉄していた国家だ、そしてそれが人類最古の鉄利用である、とされていた。
しかし近年、日本人研究者がカマン・カレホユック遺跡2005年出土の有名な鉄剣の成分を明らかにすることに成功する。それはハガネだった。これによって、それまでの「人類が利用した最古の鉄は隕鉄」は否定され、それは鋼だったとなった。
それによるとカマン・カレホユック周辺から出ている鉄のすべてが4000年前にすでに鋼製品であり、それを世界に拡散させるのは、アッシリア人であり、鉄の技術そのものも、ヒッタイト帝国からではなく、もっと早くは中南アジア・コーカサス(カフカス)地方であったのではないかと変化した。
コーカサス地方
白人=コーカソイドという古民族学の民族区分がかつてあった。今は学界では使われないが、一般人にはいまだに欧米人のことだと誤解する人も多い言葉だ。
コーカサス民族とは白人の先祖であったスキタイ系民族のことである。人類のアフリカ単一発生説で説明すると人類は、
アフリカ→中近東→中央アジア→ステップロード→バイカル湖
と移動しながら混血し、アジア人の中の東アジア人=北方系遺伝子を多く持つ人々になったと考えられている。日本人や南朝鮮人には、この遺伝子だけでなく、南方系インドシナ由来の遺伝子も若干だが含まれている。
ざっとそういうわけで、コーカサスで鉄利用は始まるというのが最新の学説である。日本人学者に拍手。
ただし、隕石からの鉄利用がなかったわけではない。これも最古級の鉄利用の、いまだにひとつではある。イヌイットが使ったのは巨大な隕石から取れた鉄であった。
ケープ・ヨーク隕石
一万年前にアラスカに落下した最大級の隕石。
イヌイットたちが製鉄に使っていた。
美しいウィドマン・シュテッテン構造が見られる。
ま、そういうこと。
それにしても、製鉄が最初は中央アジア南部で始まるとはね。騎馬民族からでしたか。なるほど。簡易製鉄というものは、原始的生活を続けている未知の未開人たちでも容易に可能である。鉄にさえ気づけばだ。地球で4番目にありきたりな鉱物が鉄である。隕石がそうであるように、地球もほぼ鉄でできている星。見つからないほうがおかしいのであった。
そして鉄や金や銅の溶解・分離技術こそが科学・掛学・化学の始まりである錬金術を生み出した。そして人類は飽食の現代に生き残れた・・・。
●鉄の溶解と分離は難しい
金はまったく融けやすく、しかも単一元素だから分離がほとんどいらない。銅も同じだ。しかし鉄を溶かすには高温が必要で、どうしても炭が発明されねばならなかった。しかも融けると、表面にどんどん泡とアクが浮かんでくる。不純物の塊である。それも超高温のアクを、人力で取り除くとなると死を覚悟せねばならなかった。そこで奴隷が生まれた。これが歴史なのだ。人は世界で同じことをする。同じ目的と同じ材料を見つけると、同じように階級を作る。どうしようもないのである。
さて、デリーの鉄柱が錆びないのは、最初から製鉄過程でこの鉄にリンが含まれていたからである。リンは表面ににじみ出てカバーするから、表面が酸化しない。という仕組み。それも偶然の産物であり、意図したものではないのだ。
デニケンにはまっていた70~80年代が筆者にもあった。懐かしいね。デニケン。儲けて儲けて、どこかに消えた。今頃はニースでビキニのねえちゃんの尻をなでながら、ダイキリでも飲んでるかな?
エーリッヒ・「フォン・デニケンは、「古代のコンタクト」("paleo-contact")と古代宇宙飛行士説を広めた責を負うべき主要人物のひとりである。 彼の複数の本で提出されたこれらの考えは、科学者および大学人の多数派によって拒絶されたが、彼らは彼の作品を偽史、偽考古学および偽科学のカテゴリーに入れた。」Wikiデニケン
そのまま最新の情報に背を向けて、おばかな研究を引き継ぐ詐欺被害者は多いのだ。
彼らは「信者」である。共通の特徴は他者の意見に耳を傾けない。猪突猛進、いや妄信するスチームローラーたちである。亡者になるなよ。君の道は笑いものの道だ。
そういうと、五味なんたら言う作家もいたな。なんでもありだったね。あの時代。
ノストラダムスか・・・。若い頃って、神秘や不思議に逃げるものだよなあ。
現代の若者は、ひとりぼっちの一軒家にあこがれるそうだ。わかる気がするね。
ああ、ひとりきりになりたいってか?おれのようにか?
寂しいもんだぜ、そうなると。それに孤独は、周囲に山ほど家があろうがなかろうが、インナートリップできるかどうかの才能の問題です。俗物じゃあいくらがんばっても無理でしょう。俗世からまず精神的に孤立する勇気がない君にできますか?
鉄はここまで。