人類が一神教崇拝から教義宗教にたどり着く前、この世界は精霊信仰という原始信仰・多神教に満ち溢れていた。北欧も、東アジアも、アメリカ原住民もみな、アフリカやボルネオやインドシナやインドの古代霊魂を崇拝していた。
日本の新石器時代も例外ではない。
アムール・サハリンのナーナイ族(中国少数民族の名はホジェン族)には、長江のミャオ族と同じ「射日神話・太陽信仰」が永続しているが、民族学の荻原真子の研究では、北東アジアのこの地域に共通しているとされ、それらは長江文明の拡散した5000年前の影響だと考えられている。長江文明人が気候寒冷化によって南下した黄河文明畑作民族によって四散し、東西南北へ広がったとき、チベットやベトナム方面だけへではなく、朝鮮半島などから船出して、日本海から日本列島を北上したもの、あるいは陸路北上して、アムール川河口部からサハリンや北方四島方面、北海道、東北へと南下したもの、ベーリング海峡を渡ったものがいたとすれば、そのアジアの南北でよく似た精霊信仰や太陽信仰、さらには戌亥の隅を鬼門とする日本の神道のルーツをそこに求めるのは、アジア民族として整合的であろう。
それを考古学的に語るならば、まさに「 玦状耳飾(けつじょうみみかざり)」が最適な遺物であることはこれまでに何度かここに書いてきた。
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縄文時代早期終末から前期(BC8000年頃~BC4500年頃)にかけて出現するこのイヤリングは一本の金属・ヒスイ・動物骨やツノなどの管を円形に曲げただけの耳輪であるが、装着するには耳たぶに大きな穴をうがつ必要があり、かなり「痛いアクセサリー」だったわけだが、それでもアジアの相当広い範囲の海岸部で出土することから、古代人たちは男女問わず、巫者たちがこれを好み、そこに魔よけ、呪性を見出していたことは間違いなく、それが耳穴の痛みを凌駕して余りある重要な品だったことも間違いがない。
装身具は、縄文時代においても弥生・古墳時代に於いても、世界共通で呪者シャーマンたちの必需品であり、その共通性は円環形であることだ。甕棺から大量の腕輪をつけて出る遺体の、その腕輪にも耳飾同様の「円の魔よけの力」や憑依の道具としての意味合いがあった。
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現代になっても女性たちが欲するそうした装身具の始まりは、シャーマンの憑依から始まり、つまり女性は今でも輪が持つ呪力のとりこのままなのだと言っても過言ではない。それこそは古代ヘテラルキー社会の象徴であり、ヒエラルキー社会では権威・裕福の象徴なのもある。だからと言って現代女性が古代人のようにいまだ魔物を信じ、憑依したりを好むとか、原始的だとか言うのではなく、現代ヒエラルキー階級社会に於いては、かつての呪具が、美や権威や裕福さの象徴と変化したのであり、決して古代のままの必要性から引き続いてきた嗜好品ではないのである。
そしてこの貴金属装身具の新たな希求こそは、経済を動かし、世界のすべての価値観を決めてしまうとも言えるわけである。
円の思想の残照が、いまだに世界中に残存することが、世界の東西の果てに隔絶された縄文世界とケルト世界の類似をつなぐ真の理由である。そもそも全世界の人類はそうした共通する嗜好性を持っていて、それが中世には教義宗教によって分断された結果、地球上に飛び地のように残った、と考えるほうが、合理的である。「なぜ?同じものが、同じ文化が?それはありえないはずの神秘的オーパーツ」だと考えると、それらは単なるミステリーとして永遠の謎になることだろう。想像の翼を広げているだけならそれはそれでいくつもの夢や童話や推理小説を生み出すだろうが、答えはいつまで経っても抽象的な空想で終わってしまう。
ミッシングリングという謎の円環とは、つまり理論宗教であるキリスト教や仏教が切断してしまった中で、奇跡的に部分的古代社会に残された。それが飛び地のように遺跡・遺物・民俗的な祭りなどに居残ったのである。
そして中世から近世にかけて、科学や客観が民間世界や宗教世界の迷信勧善懲悪主義によって悪魔とされたきた細大の理由もまた、ここにあるのである。超常現象にせよ魔女にせよ、そこには必ず整合な理由がある。キリストが迫害された理由と、それはまったく同じである。
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南ヨーロッパとインドの一部、華北、イスラム以外のほとんどが古代社会を存続させる。世界宗教が精霊信仰をつぶし、転向させていく現代社会と気がつくはず。つまり飛び地での文化風習類似はむしろ当たり前のことなのだ。われわれはキリスト教迫害主義に始まった西欧科学にだまされている。
多神教、原始信仰社会が、新しい信仰によって迫害され、差別されのと同様、少数民族のすべては「陸封」されて残った。日本人もそういうヤマメ種族なのである。
その原因のひとつに鎖国がある。