「私はケルト人の信仰をいかにももっともだと思う、それによると、われわれが亡くした人々の魂は、何か下等物、獣とか植物とか無生物とかのなかに囚われていて、われわれがその木のそばを通りかかったり、そうした魂がとじこめられている物を手に入れたりする日、けっして多くの人々には到来することのないそのような日にめぐりあうまでは、われわれにとってはなるほど失われたものである。ところがそんな日がくると、亡くなった人々の魂はふるえ、我々を呼ぶ、そしてわれわれがその声をききわけると、たちまち呪縛は解かれる。我々によって解放された魂は、死にうち勝ったのであって、ふたたび帰ってきて我々とともに生きるのである。
我々の過去もまたそのようなものである。過去を喚起しようとつとめるのは空しい労力であり、われわれの理知のあらゆる努力はむだである。過去は理知の領域のそと、そのカのおよばないところで、何か思いがけない物質のなかに(そんな物質があたえてくれるであろう感覚のなかに)かくされている。その物質に、われわれが死ぬよりまえに出会うか、または出会わないかは、偶然によるのである。」
マルセル・プルースト『失われた時を求めて』 第1巻 p73 井上究一郎訳・ちくま文庫
いわゆるプルースト効果に言及した箇所で、彼は欧州人の原郷としてのケルトについてこう言及した。
ケルトの古い時期の原初的信仰には、鶴岡真弓らの言葉を借りて申すならば、「ヘレニズムやヘブライズムによって鍛え上げられた欧州が「この世界は一個の超越的な不変の法則に支配・決定されている」という観念を根底に持つ文化であるとするならば、ケルト的と呼ばれる文化にはこのような強固な不変への確信はない」、むしろ「変化という不確かさ」への感覚が蠢いているようにみえる」のである。
「ケルトの自然や生死の描き方が、私たち日本人ないし「世紀の転換期(ターン・オブ・ザ・センチュリー)」の現代人に親しい身の丈を盛っているように感じられるとすれば、それはこうした理由と関係があるのではないだろうか」?
鶴岡真弓「ケルト文化とは何か」
ケルト人の文化はその多くを。森の変化と神秘、魔術、神話によって代表され、そこにはローマ以来の西欧一神宗教や、科学のにおいは乏しい。むしろあらゆるものに神が宿り、その根源の死生観は原始多神教が持っているもの・・・自然崇拝と精霊信仰と農耕民としての冬至、春分を重んじる太陽信仰、神を人を喰う宇宙の摂理が生み出した多様なものととらえ、その姿を人間つまり人型偶像よりも動物型アニミズム・トーテミズム的に表現している。
それがローマの影響を受け始めると、双方が混在した姿を神々は持たされるようになったのである。これは北欧の冬至祭に、原始からの、ちょうど日本の稲魂のような藁をまとった精霊と一緒にサンタクロースや悪魔が登場するのとまったく同じことであろう。
つまりケルトの本来の文化や信仰や死生観は、日本の来訪神信仰や巨石信仰とまったく変わらないものであったということが出来る。それはつまり世界の東西には、古代人としての共通する基層観念があったことを教えてくれるのである。
ケルト文化年表
鶴岡真弓・松村一男著『図説 ケルトの歴史』掲載の「ケルト文化年表」より
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中世以降、人々は神を一本化しようとしてゆく。国家をひとつにまとめるためには、神々がいろいろ存在していてはややこしい。心をひとつにせねば外からの異教徒には打ち勝つことができないからである。こうして神の使いであった巫王の時代は、強力な軍事組織と客観的政治組織を持った政治王へと移っていった。それが中世である。
それは言い換えると「憑依を必要としない」科学的、客観的な政治の始まりだったとも言える。一神教が持つ理念は、唯一絶対の神がいるのであるならば、それは宗教王に管理させておけばよく、それによって世界を統一する野望を考えるひまを政治王に与えた。憑依の時代には、どんな巨大な岩石ですら、神々のために持ち上げることが可能であった。そうあのストーンヘンジのようなどうやって動かし、石を乗せたのかも見当がつかないものすら、憑依の力で作り出せたのだ。痛みや苦痛、重さ、大怪我、死などはトリップすることで乗り越えられたのだろう。だから中世、近世、近代と時を経るにつれて、われわれが作り出すオブジェからは、神がかり的な異常さや巨大さが消えていった。そのことを現代の人々は、もしや人類は退化しているのではないか?とも感じてきたが、そうではなく、人類の行動がシンプル化していったためだと考えられる。すべてはある種の時間を捻出するための合理化だったと思うほうがよかろ。その時間とはつまり侵略の時間である。神々の視線を宗教者にまかせてしまったことで、人類がそれまで抑えてきたサルの欲望=原初的な領地拡大と収穫の増大、耕作地の拡大の野望である。簡単に言えばそれは喰うための戦いであった。だからそれは実はサルたちのテリトリー拡大の要求と同じものである。
巨石・自然崇拝からローマ的人型偶像崇拝へケルトは変容していった
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筆者が言いたいのは、現代へ進化したと思ってきた我々の暮らしは、本当は動物の第一次的な欲求が堰を切ってぶり返し始めているのではないか?ということなのである。それの象徴が科学であるならば、科学の行き着くところとは、人類を進化させ超越させて神に近づける行為ではなく、むしろ歴史を逆行して動物の時代へ、一次的欲望の時代へと逆戻りさせるものなのではないか?という疑念である。
筆者がケルトに興味を持ったきっかけは、日本のオリジナル模様である弧文や弧帯文などが持っている渦巻き・螺旋形へのあこがれ・・・言い換えれば途切れずにつながる永遠の命のバトンをつなぐ性のいとなみの形、それがへびのとぐろや、山の紡錘形や、貝輪が持っている渦巻きを絵柄にすることで、世界共通だと感じたからである。最初は、その類似は、双方のいずれかの影響がどちらかへ伝播したから、そしてその絵柄を持つ民族がその文化を持ってインドや中国までやってきて、そこから日本へも伝わった結果だろうと思っていた。しかし、やがてそれは短絡的な、安直な発想だということに気がつかされた。類似する文化の多くは、実は別々に着想されて偶然、隔絶した世界で互いに自然に生まれ出たのである。
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ケルトの渦巻きは、日本の縄文時代からすでに列島に存在した。
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その原初的デザインは永遠の命の連環への願いを表している。そのことに不思議なことだが弥生人も古墳時代人も気づいている。
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貝の断面にその螺旋形が存在することに気づき、それをそのまま貝輪として、魔よけにしたのだ。
その後、科学・生物学・遺伝子学からのアプローチでも、生命体が自然に渦巻きや螺旋に細胞を成長させようとしていることが言われ始めた。民族学的なデザインが、実はすべての生物が持って進化してきた「記憶」として刷り込まれているという驚きである。
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人間の考え出す模様や死生観が、実は生物がこの地球で発生したときから営々と受け継がれてきた「永遠の生」への希求であることがようやく徐々に見えてきたのである。
そうした原初的なデザインや、自分の胎内に内在する神秘性を捨ててきた。ということは、人類の脳内の時間は、前にではなく、実は後ろに向かっている(=退化している)のかも知れない。
ケルトだけにこだわらず、すべての古代の民族が、時間差はあっても日本の古代人と同じ螺旋を命の象徴として選択して来た。それは無意識のうちで考え付かれた。それはアフリカで草原を歩き始めたサルの脳内に、すでに刷り込まれた希求だった。いや、もっともっと以前の、地球に水があふれ、雷鳴と雷電が海に最初のアメーバを生み出した何十億年も前から、気の遠くなるほどの時間と距離を乗り越えて、地球上の生命すべてに「記憶」としてインプットされたものだったのである。ならば、この共通する螺旋をもっと前に作り出した、つまり水面に石を落としてもできる渦からもう、われわれの神々のシナリオは始まっていたことになるのではなかろうか?
そそれは「神々の指紋」ともいうべき宇宙の真の姿かも知れない。
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