くえ・ぐえ 古語・崩え、類語くづ、くず、葛、かづ、かど
山地崩落地名である。
崩える。
類語 くえ引き、くーち(くえ地)、くえん平、大崩山 いずれも宮崎県
山くえ=奈良県吉野、
ぐえる=奈良県五条市
万葉集 「くゆ」=崩れる
なぎ 古語・薙ぎ 類語・なで
栃木・山梨・静岡・長野
「なぎが起こる前には石ころが落ちる」
別・大分県国東 焼畑のこと
富山・石川・福井・岐阜で焼畑
語源 薙ぎ切る=切り取られたように崩壊する
ガレ
同上地域で、岩石だけの崩落地
くめ・やまくめ
静岡県の一部
「土手がくめた」=崩落した
つえ・つえぬけ 古語・ついえ、つゆ
島根県石見地方
語義=潰れる
やまずれ
鳥取県東伯郡
山がずる=ずれる
やまぬけ・ぬけ
福井県勝山市北谷町
炭用の木材を切り出したあとにやまぬけが起こりやすい。
そういうところには、イタドリ・フキ・アザミなどが繁茂する。
たにぜめ
三重県伊加(旧伊賀)市
谷攻め
せとをうつ
静岡県浜松市天竜区
崩落によって堰とめられる
おしだし・おんだし
長野県飯田市など
沢が土砂を押し出すこと
じゃぬけ
長野・山梨
意味・蛇抜け
ほら・ほらがい
大音響
ほらにはほかに洞窟の意味もあり。
類語・ほげ 九州北部 穴がほげる
椎葉村の伝承では、先祖・長老が「あそこだけは木を刈ってはならん」とされてきた山の斜面を、管理者が老いて売ったところ、それまでの広葉樹・落葉樹の森を、すべてスギに植え替え、結果的に崩落をまねき、死者も出してしまったという。
現在、森林管理の行き届いた山の斜面では、尾根には根を張るブナ・ミズナラ・山桜・もみじなどの原生林、谷にはスギやヒノキと、まだらに森が作られ管理状態が見て取れる。これも災害をさけるヒントになる。
斜面の森林そばに住むのなら、その管理状態を知っておくべきである。
とくに昨今では、山持ち地主の高年齢化によって、森林管理が杜撰になっているケースが多く、その多くは管理組合に委託されてきている。目の行き届かぬ森もかなりある。外見上、そうした森ではスギやヒノキは上に上に伸び放題で、下草も刈られず、「黒い森」と呼ばれている。こうなると狭い空間に木々がせめぎあうために、根を十分に張らない木々ばかりになって、大雨で容易にくえてしまう。
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奈良県吉野や熊野にはこのようなくえがたくさん存在する。つまり吉野はもとから「悪し野」である。
参考文献 野本寛一『自然災害と民俗』2013