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アレロパシー/フィトンチッド/コンパニオン・プランツ 秘伝か共有か

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前のヒガンバナのアレロパシー効果ついでにその他の植物のアレロパシー成分について豆知識を書いておきたい。



アレロパシー(英語: Allelopathy)とは、ある植物が他の植物の生長を抑える物質(アレロケミカル)を放出したり、あるいは動物や微生物を防いだり、あるいは引き寄せたりする効果の総称。邦訳では「他感作用」という。ギリシア語の αλληλων (allēlōn 互いに) + παθος (pathos 感受) からなる合成語である。1937年にドイツの植物学者であるハンス・モーリッシュにより提唱された。

アレロパシーを有する植物の例
アレロパシーは、連作障害の原因の1つと考えられている。セイタカアワダチソウなどの帰化植物が勢力を拡大する要因の1つでもある。
また、特定の植物により雑草害虫防除する生物農薬としての利用が注目されている。




●セイタカアワダチソウのDME(2-シス型デヒドロマトリカリア・エステル)
セイタカアワダチソウの他感作用物質はポリアセチレン化合物のひとつ,DME(2-シス型デヒドロマトリカリア・エステル)とされ,遷移の前段階の優占種ブタクサにも,次の段階のススキにも阻害的に働くばかりでなく,自らの発芽にも阻害的であった。
 多くの植物で他感作用を示す化学物質が発見されている。それらの一部をあげる。
① 降水による溶出の例:セイヨウナシやナガバユキノシタの葉からアルブチン。ナナカマドの実や種子からも。
② 大気を介して伝播する例:サルビア属の植物の葉からテルペン類。ヨモギ属の葉からも。
③ 土壌を介して伝播する例:モモの根からアミグダリン,リンゴの根からフロリジン,麦類の根からスコポレチンやクマリン,シバムギの枯死した根からフェノール酸など。
【帰化植物の侵入】 セイタカアワダチソウは明治末期に北アメリカから日本に侵入したと考えられる。アメリカでは花の少ない時期に蜜蜂の蜜源として重要な植物であった。日本で分布が急激に拡大したのは第二次世界大戦後である。虫媒花なので花粉症を起こす植物ではない。
【参考文献】 『環境植物学』 田崎忠良(編著) 朝倉書店 1978,『種子生物学』 鈴木善弘 東北大学出版会 2003



胡桃の木のユグロン(juglone、ジュグロン)または5-ヒドロキシ-1,4-ナフタレンジオン(5-hydroxy-1,4-naphthalenedione)、5-ヒドロキシナフトキノン(5-hydroxynaphthoquinone)は、化学式がC10H6O3の有機化合物の一つ。食品産業では、C.I. Natural Brown 7、C.I. 75500とも呼ばれる。この他にもヌシン(nucin)、レジアニン(regianin)、NCI 2323、Oil Red BSという呼称がある。
ユグロンは、クルミ科植物、特にクロクルミ (Juglans nigra) の、殻および樹皮で生成し、多くの植物に対し有毒または成長阻害を及ぼす。ユグロンは、除草剤染料インク食品および化粧品のカラーリング剤としてよく使われる。

ユグロンはアレロパシー化合物の一つである。造園家は、クロクルミの木の下でのガーデニングは難しいということを長く知っていた。これはユグロンが代謝に必要な酵素を阻害する効果を有するためである。ユグロンに耐性を持つ植物および木には、カエデ (Acer)、カバノキ (Betula)、ブナ (Fagus)がある。
ユグロンは多くの植食昆虫に有毒である。しかし、ユグロンを1,4,5-トリヒドロキシナフタレンに無毒化するものもいる。






さくらのクマリン (coumarin) は化学式 C9H6O2 で表される有機化合物ラクトンの一種で、芳香族化合物である。常温では無色の結晶または薄片状の固体
の葉に代表される植物の芳香成分の一種。バニラに似た芳香があり、苦く、芳香性の刺激的な味がする。桜湯や天然のオオシマザクラ塩蔵葉を用いた桜餅の香りはこれらに含まれるクマリンなどによるものである。
生きている葉の中ではクマリン酸(o-クマル酸)配糖体の形で糖分子と結びついて液胞内に隔離されているので匂いはしないが、これを含むサクラヒヨドリバナなどの葉や花を半乾きにしたり破砕、塩蔵するなどすると、死んだ細胞の中で液胞内のクマリン酸配糖体と液胞外の酵素が接触し、加水分解によりクマリン酸が分離、さらに閉環反応が起こってクマリンが生成し、芳香を発するようになる。
抗酸化作用や抗菌作用があるが肝毒性もあるため、日常継続的に大量摂取することは好ましくない。食品添加物としては認められていないが、インターネットショッピングや業務用販売などで桜葉や桜葉パウダーが食品素材として流通している。






同様にヒガンバナはキク科植物を寄せ付けない成分を分泌する。
またここに書かれていないし、植物抑制効果ではないが、よく知られているのは、マリーゴールドが線虫( ネコブセンチュウ)やナメクジ等の害虫を寄せ付けない虫除け成分を根から分泌。またフレンチマリーゴールドや除虫菊には殺虫・除虫成分がある。これらの効果はフィトンチッド (phytoncide)(殺菌・揮発性化学物質)と呼んでいる。

また正反対に、ある種の植物と共生させると相乗効果でどちらにも有効なケースの植物をコンパニオン・プランツ(共栄作物)と呼ぶ。







このような効果を、園芸家やプロの農業従事者たちは経験や伝承である程度知っている。だから作物の栽培に素人ほどは失敗せずにすむ。ということは栽培する作物は、どんどんよい品物になるわけである。一代だけではなかなかそうはいかない。

またある果物や野菜同士にも相性があり、例えばリンゴとじゃがいもには、互いに相手を成熟過多にして腐らせるアンチ相乗効果があることを青果業者は知っている。


これらの多くは往古からの経験と、近代の科学によって知られることなり、すべては代々伝世される技術である。しかし農業などの技術の多くは、現代、家単位での継続が途切れ始めたために、技術も専門家に学ぶことになってしまっている。明治以前までは、それらのいくつかは常識であり、学ぶものではなかったはずである。

このように、古代から永続的に伝わってきた知識が、現代では途切れてしまっている。神社仏閣の建築技術などは式年遷宮によって歯止めされているが、一般的な家庭的科学は、代が変わるとたち切れになってしまうものである。例えば、古代から巫覡らがその薬効を祭祀に使用してきた植物群などもそのいい例で、中国の漢方のような科学的・非科学的双方面からの経験的記録などが日本ではあまり成文化されてこない傾向が強かった。言い換えれば、それらの効果を科学よりも、秘伝、丸秘の秘め事としてきた面のほうが強かった。このような一子相伝方式は、神秘性を強め、謎を見せることで自分のカリスマ性を民衆に見せ付けるための秘儀だったからだろう。要するに手品のトリックなのである。

たまさか、それらの秘伝をおしげもなく誰にも広めようとする人々が出たが、彼等は後世、偉人、立志伝中の人ともなった。

科学や食品合成成分に秘事があってはならない。しかし祭祀にはむしろ秘め事であることが最重要となったわけである。マツタケの自生地は誰も教えてくれない。魚釣りのポイントも教えてはくれない。それと同じである。

秘め事、相伝、世襲の時代を古代と呼ぶ。
そういう意味で職人世界は古代そのものを引き継いできたわけで、それはそれで貴重だったとも言えるだろう。なにもかもがガラス張りになってしまうと今度は味も素っ気もない世の中になってしまうからややこしい。




















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