DNA遺伝子の塩基配列を比較すると、ヒトと昆虫や線虫でも二倍ほども違わない。まして近縁のチンパンジーとでは1・23%しか違わない。それらの理由は後天的挿入と欠失によっている。必要がなくなって失われたものや、新しい必要性で生まれ入れ替わったものだ。それらをすべて足すとゲノムの全塩基のうち、だいたい1.5%程度の違いしかなかった。サルと比べても似たり寄ったりだろう。
(ただし
これまで、ヒトとチンパンジーの塩基配列の違いは1%余りとされていた。しかし、今回の研究では、両者で塩基の種類が変わっている部分が1.44%あったほか、塩基配列が加わったり、逆に欠けている部分が約6万8000カ所も見つかった。合わせた違いは5.3%になるという。
また、染色体上の遺伝子231個を両者で詳しく比べた結果、192個(全体の83%)で、遺伝子が作り出すたんぱく質に違いがあった)
ただしゲノムの差異がそのまま種の形態や機能の違いではない。むしろそれはごく一部だけしか作用していないといわれている。ヒトが言葉を発するためのアミノ酸からなるたんぱく質で、その303番目がチンパンジーではトレオニンだがヒトではアスパラギンが置かれている。また325番目は、チンパンジーがアスパラギン、ヒトはセリンが置かれてある。たった二つのこの違いは、ヒトとチンパンジーが500万年ほど前に分岐したあとにヒトの系統だけで生じた。ほかの類人猿(最近は類人という)やサルまでは、チンパンジーと同じだからだ。たった二箇所の違いだけでヒトは言語を持つに至ったわけである。
以上のことは、つまり人類が同じ原猿から少しづつ環境適応することで分岐したことを示すことにもなる。
そしてそれらの派生の原因は突然変異である。
突然変異を起こすのは女性よりも男性が圧倒的に多い。生活環境変化がメスよりもオスが多いためだろうか?
いずれにせよ種の進化(退化)は常に突然変異したゲノムの部分的因子によっていることになる。それを後の世代にまで引き継がせているのはY染色体でもMTDNAでもなく核DNAである。ということはその種の進化や退化に関して考えるには、核DNAの分析を中心にして、Y染色体やMTDNAの分析を補助的に使うべきである。しかし後者二種に比べて核DNAのサンプルは非常に解析しにくく、しぜん、サンプリングが難しくなるので、それが残存できる環境におかれた稀有な遺骸の発見が今後の正解のための大事な要素になる。考古学的発掘しだいなのである。
どっちにしても篠田教授もすでに昨年のテレビ出演で、自説のMTDNA分析にほかの研究成果を加味した、D4遺伝子の拡散と日本人のルーツについて語り始めており、バイカル湖起源説が母方だけであることはさすがに言わないが、もっと分析が必要なことを示唆しているのである。
バイカル湖の遺伝子も南下してD4震源に南下する。南方系遺伝子の持ち主やさまざまな遺伝子の人々が震源地である華北華南の中心部で出会い、そこからさらに多岐に変化しながらヒトは拡散したのである。そのもっとも混合して拡散したひとつが原日本人であろう。MT分析のサンプルデータは現代人のものが多かったということだ。もっと古代人の原種により近いサンプルが求められている。