邪馬台国纒向説と現代歴史観の元凶

邪馬台国については、誰にもまだ、ここだった、とは言えるしろものでない。

仮説が定説として認められるためには、前後の歴史に整合性があり、四世紀の古墳時代まで隆盛し、さらに飛鳥のなぜもどったかの矛盾しない論理を要する。

纒向が3世紀に隆盛して飛鳥以降の天皇支配までつながったのだとするのなら、なぜ古墳主体が纒向から馬見、そして河内地方へと動いたのかを言わねばならない。

歴史上、海岸部に首都を造営できた時代は、大陸の動向が安定して、倭国が中国との通商をちゃんと迎えた安定期であった。例えば魏が三国統一した時代、宋が統治した安定期、唐の安定期である。

飛鳥末期～奈良時代初期にかけて孝徳大王が難波の宮を造営するのも、唐の時代だったからだ。しかし、飛鳥の聖徳太子・蘇我王権が隋に送った国書は、太宗皇帝には不評で、結果的に隋・唐とのつきあいは成功したとはいえなかった。だから難波の宮もいっときだけだった。

五倭王の武が宋に上表文を送ってえにしを結んだ古墳時代も、宋が安定政権を築いて極東を管理下におけたからこそである。

ならば卑弥呼や壹與のあとも、纒向はまだまだ続いていなければならないだろう。しかしそうはならずに河内に新たな王権が生まれている。中国では魏→西晋の乗っ取りが起こり、さらに戦国時代がはじまった。不安定ゆえにこうなった。ようやく宋がこれを統一して五王政権が登場する。あきらかに倭五王だけが異質である。

そして五倭王武烈以後、継体がそれを引き継いだとするのは記紀だけである。

血縁的断裂がそこにはある。

この継体から欽明までの間を「激動の時代」「二朝並列時代」と言い、ふたつ、ないしは複数の群雄割拠の時代と見るべきだろう。『日本書紀』はその激動をなかったとしているだけである。だからこそ継体を応神の子孫だと書いたわけだ。

これらの政権の断裂と血脈の切れ目がある限り、邪馬台国から大和政権がつながっていたとする記紀歴史観が実は、今の歴史観の大元、元凶なのである。

つまり邪馬台国大和説には、非常に戦時中の皇国史観の残存がありすぎて危険である。

これを科学的に、ちゃんとしたもので証明していくことが、大和説の若い人々の使命であろうと見ている。