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青い石と比企氏と日本横断石の道・材木の道そして絹の道

 
 
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石川県輪島市の青石塔婆

「まえに北国と比企(ひき)氏のことを話しました(森・網野対談集『この国のすがたを歴史に読む』2000)ように、比企氏の通った道、関東から北陸に出る道が、日本海に通ずる道だったのではないかと思います。
 
比企氏は上野(こうづけ)・信濃の守護をしており、いずれにせよ武蔵から北陸に出るルートを押さえています。日本列島を横断して日本海と太平洋をつなぐ道は何本もあったのではないでしょうか。それは陸路だけでなくて、できるだけ河川を使い(古代運搬はいかだの下に重いものを結んでいくことが阿蘇ピンク石運搬でわかっている)、若干の陸路を通ってまた河川に入るようなルートがあり、そこを物が動いていたのではないかと思います。
 
石川県教育委員会の三浦純夫さんが報告していましたが、輪島に青石(秩父石)の板碑があるのです。これは間違いなく武蔵産の緑泥片岩で、武蔵から持っていったとしか考えられないのですが・・・・あんな重いものを馬の背に乗せてくるとは考えられないので、ある程度は河川で・・・輪島に荘園を持っている大家荘の地頭は長谷部氏ですが、鎌倉に根拠地を持っており、南関東にも根拠地があったと思われます・・・比企氏の切り開いた道で運んだのではないか・・・。もっと先へいくなら高句麗から日本海にモノが入り・・・・武田信玄と上杉謙信の川中島の戦いも、このルートの支配権がからんだ・・・(いわゆる塩の道)」
網野善彦
 
 
 
 


 
 
このルートで重要な役目を果たしたであろう氏族に安曇氏という海運者がいたことであろう。玄界灘から出雲を経て、日本海と太平洋を河でつないだ氏族である。また中世に比企氏となっていった前の石工・石材運搬業者、鉱山開発者たちもいたはずである。彼らの歴史はせいぜい中世で止まるはずがなく、高句麗からやってきた石工・職能渡来人たちと協力した縄文時代からの専門家が関わったのではなかろうか?武蔵秩父から横浜港まで、絹の道があったことはシュリーマンの来日から確かである。
 
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【板碑】より
…関東地方のものは,現在までに約3万基が知られ,秩父産の青石(緑泥片岩)で作られ,薄く板状にはがれやすく加工もしやすい,という石材の特色を生かし,頭部を三角形とし,2本の溝状の線を刻み,梵字や画像で主尊の仏を表現するなど,形態的にすぐれ色も美しいものが多く,そのため,江戸時代から文人などに好まれてきた。板碑という名称もこの関東地方の板碑(武蔵型板碑,青石塔婆などともよばれる)にもっともふさわしいもので,東北地方などには,丸い自然石に仏の種子(しゆじ)と銘文が刻まれるだけのものもある。 板碑造立にこめられた信仰は,板碑の主尊や銘に刻まれた経典の一句(偈(げ))から知ることができるが,大半は阿弥陀仏に対する信仰(武蔵型板碑では8割以上)を表明し,偈の出典としては,法華経や浄土三部経から引かれることが多い。… http://kotobank.jp/word/%E9%9D%92%E7%9F%B3%E5%A1%94%E5%A9%86
 
 
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                          埼玉県秩父の青石板碑
 
 
青石塔婆、あるいは青石板碑
秩父の長瀞などでとれる緑泥片岩製。
この石は雲母のように剥片で採集できる。
 
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                   秩父石(緑泥片岩の剥片)
 

緑泥片岩などの青い石を使った地域には、筆者の知るところでは豊後海部氏の古墳(亀塚古墳)、豊前地域などがある。この青石は佐賀関産。
また緑色の石をわざわざ使って環状列石を造っていたのが、東北大湯の縄文人である。
 
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                         大湯環状列石の石英閃緑ひん岩
 

 
つまり緑色の石を好む風潮はもともと縄文人にあって、その石を探してゆく専門集団が縄文時代から引き続いて、今度は古墳の石や中世仏教石造物を探査していった可能性もあるかと思える。
 
秩父の青石板碑製作者というと、まず武蔵比企(ひき)氏ということになる。

「ひき」という地名は表記はさまざまで全国に点在するが、熊本県玉名市に疋野神社があって中世郡司に日置氏があったことを思い出す。玉名市は阿蘇凝灰岩を菊池川から切り出すときの集積港である。
 
ひき氏について、こういうことをあまり書く人はいないようだが、鹿児島日置を含めてこの氏族は「石を引く」専門家から生じた、あるいは東北縄文人が秋田大湯~日本海~中部山地~武蔵へと、高層建築木材を探査するグループに同行して埼玉県の秩父へ抜ける道を開発して行った可能性が高いのではないかと思える。土建業と運搬によって繁栄していったのではなかろうか?それで表記は違っても「引き」を氏族名にしたか?
 
 
まず埼玉奥地の秩父の水呑から比企氏が出ているようだが、彼らはあきらかに日本海の能登まで、諏訪~千曲~信濃川~越後というルートで抜けていく道を持っていた。こうした職能の伝統は古墳時代からの半島渡来石工だけではなく、関東に多かった蝦夷工人の情報や知識が不可欠だったはずである。
 
(武蔵のさきたま大古墳、武蔵国造一族の繁栄の影に渡来工人と海人と蝦夷有り)
 
そういう職能の道の視線で見ていくと、斉明天皇のときに土木工事や寺社建築に飛騨の蝦夷木工集団が招聘され、百済が送ってきたペルシア人建築士たちと接待を受けていたことを思い出す。緑泥片岩などの緑色は「死者の色」であり、それが中世になって凡字を刻む板碑にも採用されたのであろう。
 
青い石とひき集団の関係を調べて見るのも面白かろう。さらに彼らの女たちが、探査旅行の多い夫のいぬ間は養蚕・絹織物にまい進したと考えれば、漂泊の職能民とその妻の関係が、やがて諏訪の夫婦道祖神を生み出すことにも関連してくるのかも知れない。石、木材、金属、養蚕とくれば、武士を生み出す原動力であり、国家中枢である富国強兵もこの線上にある。つまりこれらの重工業はすべて太古から現代へと切れ目なくつながった日本人共通の大目的だったことに気づくのである。
 
稲作から歴史を見るのもけっこうだが、それだけでは底辺日本人の心情や動向のすべては見えてこない。
なぜ水呑たちが水田農民から蔑視され、そして大金を儲け、白い目で悪く言われながらも決して消えることなくしぶとく生き残ったか。それは国家にとって米以上に、それらの産業が国力増産に役立った「実業」だったからにほかならない。
 
そういえば関東には多胡碑など、古代からの石碑も非常に多い。また民間の文字の識字力も他地方より群を抜いており、墨書土器や練習した板もたくさん出てくる。あるいは万葉集でも東歌の数の多さは目を見張るものがある。それが石碑が多いことと関係が深いことだろう。関東の文化は、西日本・大和のように神話や祖神にこだわらない出自で、割合合理的、即物的である。
 
 
 
たったひとつの石碑に注目しただけでも、その地域の人の動きは見えてくる。
だから古代史をやるといえども、中世・近世・あるいはそれ以前の太古まで、広く知識を持つべきである。
もちろん現代にも詳しい必要もあるし、人間がどう活動したか、どう感じて生きていたかを知るだけの人生経験も必要だ。森浩一や網野善彦のような甚大な知識人に年齢など関係ない。いや知識は年長者こそ豊富に持っている。
それを縄文まで遡り結ぶことができた時、歴史は貴金属以上の光彩を、調べるものに与えてくれる。
これこそが歴史ではないだろうか。
 
 
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