Quantcast
Channel: 民族学伝承ひろいあげ辞典
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1881

敗者の古代史・筑紫君磐井はどこへ逃げたか?石人分布図

$
0
0
 
イメージ 1
 
 
 
武装石人の分布
 
イメージ 9
 
■福岡県 (筑紫国)
石人山古墳(せきじんやま) 福岡県八女市広川町大字一条字人形原
岩戸山古墳(いわとやま)  福岡県八女市吉田字甚三谷(石馬・靫・石獣など複数)
石神山古墳(せきじんざん) 福岡県みやま市高田町上楠田
鶴見山古墳(つるみやま)  福岡県八女市豊福字鶴見山
 
イメージ 3
 
 
■熊本県(火(肥・氷)国)
臼塚円墳         熊本県山鹿市石字臼塚
江田船(舩)山古墳(えだふなやま) 熊本県玉名郡和水(なごみ)町(旧菊水町)江田
清原古墳群 (せいばる)  熊本県玉名郡和水町江田(石製靫もあり)
チブサン古墳       熊本県山鹿市大字城字西福寺(現物東京国立博物館) 
三の宮古墳(さんのみや) 熊本県荒尾市原万田  
参考・木柑子二ッ塚古墳  熊本県西合志町(様式に違いあり)
など(ほか3ヶ所?は情報待ち。全9ヶ所)
 
イメージ 4

  
■大分県 (豊国)
臼塚古墳 (うすづか)   大分県臼杵市(旧南海部郡臼杵)大字稲田
下山古墳 (しもやま)   大分県臼杵市大字諏訪
 
イメージ 5
 
 
■レリーフによる石人
鍋田横穴群・27号墓    熊本県山鹿市鍋田
長岩横穴群108号・101号  熊本県山鹿市長岩志々岐台地南側 
 
イメージ 6
 
 
■その他
伝世品や流出品が日田市などにあり。
 
■石馬
岩戸山古墳(旧福島城址・現在岩戸山古墳資料館)その他多数の石造物
調査当時の詳細画像http://inoues.net/museum/iwatoyama_museum.html
石馬ヶ谷(いしうまがたに)古墳 島根県米子市淀江町天神垣神社淀江町歴史民俗資料館所蔵
筑紫君との関係はないか?
 
イメージ 7
 
 
 
 
 
 


 
 

筑紫君磐井の墓とされる岩戸山古墳には古墳別区が作られた。別区とは祭祀などをするための張り出し部で舞台のような突き出したどたんぼであるが、この様式は摂津の継体大王の今城塚古墳にも存在する。岩戸山の場合、ここに多数の石人・石馬・石獣・石鳥・石製武器などが置かれて放置されてあった。
 
その中に非常に珍しい「解部(ときべ)と盗人とイノシシが裁判をしている」石造があったと記録にある。『釈日本紀』(鎌倉時代末)が引用した『筑後国風土記』逸文(720年代成立か)である。
 
イメージ 2

 
「上妻(かみつやめの)県(あがた)。
県の南二里に筑紫君磐井の墓墳有り。高さ七丈、周六十丈なり。墓田(はかどころ)は、南北各々六十丈、東西各々四十丈なり。石人・石盾各々六十枚、交陣(こもごも)つらなりて行を成し、四面に周匝(めぐれ)り。東北の角に当たりて一つの別区あり。
 
 号づけて「衙頭(がとう)」と曰ふ。衙頭とは政所なり。其の中に一石人有り。縦容(おもぶる)に地に立てり。号けて「解部(ときべ)」と曰ふ。前に一人有りて、裸形にして地に伏せり。
 
 号せて「偸人(ぬすびと)」と曰ふ。生けりし時に、猪を偸みき。仍りて罪を決められるを擬る。側に石猪四頭有り。「贓物(ざうもつ)」と号く。贓物とは盗物なり。彼の処に亦石馬三疋・石殿三間・石蔵二間有り。
 
 古老伝えて云えらく、雄大迹(おほど=継体)天皇のみ世に当たりて、筑紫君磐井、豪強暴虐にして、皇風に偃(したが)はず。生平(いけりし)時、預め此の墓を造りき。
 
 俄かにして官軍動発(おこり)て襲わんとするの間に、勢の勝つまじきを知りて、独り自ら豊前国上膳県(かみつみけ・のあがた=豊前市上毛郡)に遁れ、南の山の峻(さかし)き嶺の曲(くま)に終はてぬ。
 
 是に官軍、追ひ尋まぎて蹤を失いき。士(いくさびと)怒り泄やまずして、石人の手を撃ち折り、石馬の頭を打ち堕おとしき。古老伝えて云えらく、上妻の県に多く篤疾あつきやまひ有るは、蓋し玆これに由るか、と。」
 
 
言葉は鎌倉末期の用語で書かれているわけだが、「解部」とは裁判官である。生贄に用いていたイノシシを盗んだ男が、そばに盗んだ証拠品であるイノシシも置かれていた。男は裸である。裁判官はおそらく磐井本人かと思う。
 
6世紀の大和にはまだ裁判システムなど存在しなかった。それだけ筑紫がまだまだ最新鋭の政治機構を海外から取り込める実力者だったことになる。部分的にそれは大和を凌駕していたわけだ。こういう筑紫の最先端の一面は、実は平安から鎌倉時代以後も、輸入品の最新鋭さなど文化面で中央を圧倒していた。それは博多や筑紫野が日本最大の国際貿易港だったからである。
 
平清盛も博多の筑紫の国衙・郡衙には手を焼いたという。幕府の輸入品を転売したり私物化していたからである。今城塚の別区は岩戸山の影響を受けたとさえ考えられている。
 
このように筑紫は江戸時代に長崎にその坐を奪われるまで長く、日本一の貿易国だった。
 
さて、継体に敗れた磐井は豊前に逃げたと風土記は書いた。そして「独り自ら豊前国上膳県(かみつみけ・のあがた)に遁れ、南の山の峻さかしき嶺の曲に終(はて)ぬ。」
 

豊前の南の険しい山々の一隅に隠れて死んだというのである。「はてぬ」であるから死んだのであろう。豊前の南の山々とは英彦山山系のことであろう。越えれば豊後の日田などへ出られる。さて、いずかたであっただろうか?果たして磐井は単騎で逃げただろうか?もしそうならば岩戸山古墳は遺骸なき仮墓だとなってしまう。
有間皇子や大友皇子の例を見ても、いくさや反乱で首を切られても、胴体は現場にほったらかされたようである。風土記の言いたいのはそういうことかも知れない。ならば磐井戦争の決戦場は豊前上毛郡だったことになる。今の豊前市太平村あたりで、目の前には山国川が流れる。秦氏のメッカである。宇佐のすぐそば。対岸はあの黒田如水官兵衛の中津市(下毛郡)である。そこから山方向へ南下すると八面山に行き当たる。越えれば紅葉のメッカ耶馬渓である。そうすれば日田市がすぐそばになる。
 
イメージ 10
 
 
しかし日田には装飾古墳はあっても、磐井のシンボルである石人のある古墳はない(伝世された石人ならあるが、それは岩戸山から持ってきたものである。)
日田市ならもう豊前でなく豊後国である。
 
磐井はどこに消えたか?
 
筆者は筑紫や豊前から隔絶した豊後国南部の南海部郡臼杵市に宇佐から船で消えたのではないかと勝手に妄想している。というのは臼杵市のような火からも豊からも隔絶した、九州島の東の果てにある場所に、なぜか石人を持った前方後円墳が二基存在するからである。臼塚・下山古墳である。
ふたつは臼杵湾を眺める太平洋に面した高台にある。
 
そもそも、筑紫君磐井が「巻き込んだ」火と豊とは、それぞれの国のどの地域のものだったかはまったくわからない。しかし石人があれば、まずそこが同盟者だったと考えてよい。つまり記録は火と豊を巻き込んでと書いてはいるが、それが火君だとか大分君だとかは言っていないわけだ。すると二国全体が加担したのではなく、ある地域のもの・・・たとえば勝手に動けた海人族とか・・・なら個別に加担できるわけである。
 
逃げ込むなら、それらの同盟者で一番遠隔地を選ぶのが普通ではないか?
 
 
 ついでながら、筑紫君と記録にはあるが筑紫国造磐井である。
国造としての筑紫君は大彦の子孫。
しかし一方で多氏とも言う説もある。
ここで決定はしがたいが、多氏の系譜はどちらかというと海人系で装飾古墳を持つと思われ、火君・大分君系であるので、装飾古墳を一切持たない筑紫国造家は別であろうので、自称どおり大彦子孫をとりたい。
 
本拠地は有明海側ではなく糸志摩半島である。伊都国系譜になる。ここに装飾古墳はない。八女や久留米は記録にある決戦地で、同盟者のいた土地であるが、やはり装飾古墳はない。熊本県北部の中央部で両方を持つのはチブサン古墳だけである。やはり装飾古墳と筑紫国造には縁がない。むしろ江田船山などと同じ、派遣されてきた国造組であろう。臼杵市にも装飾古墳はない。筑紫「君」と在地豪族の名前を持つが、中央官人だったことに疑念はない。攻めてきた上毛野との話し合いに「同じ釜の飯を食った間柄ではないか」と責めるシーンがあり、ともに中央で官僚だったに違いないのである。
 
つまり継体の時代には筑紫君は伊都国時代の王ではなくなっていたわけである。
 
ということは継体以前の応神王朝の間までに、筑紫の王家はとっくに筑紫を出ていたかと思われる。どこへ?もちろん吉備やヤマトであろうよ。あとから来た国司豪族が、在地の系譜を詐称することは阿蘇君のカムヤイミミ系譜取り込みですでに解説済み。
 
 
 
イメージ 8
Kawakatu’s HP 渡来と海人http://www.oct-net.ne.jp/~hatahata/
かわかつワールド!なんでも拾い上げ雑記帳
 
http://blogs.yahoo.co.jp/hgnicolboy/MYBLOG/yblog.html
画像が送れる掲示板http://8912.teacup.com/kawakatu/bbs/
Kawakatu日本史世界史同時代年表http://www.oct-net.ne.jp/~hatahata/nennpyou.html
公開ファイルhttp://yahoo.jp/box/6aSHnc
装飾古墳画像コレクションhttp://yahoo.jp/box/DfCQJ3
ビデオクリップhttp://www.youtube.com/my_videos?o=U
デジブック作品集http://www.digibook.net/?entrycode=openAuthorDigiBookList&companyuuid=a09029c91b6135a0ab4fbd77295016a8&pageno=1

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1881

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>