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Channel: 民族学伝承ひろいあげ辞典
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日本人が気づかずに最大摂取している魚・その民族考古学と世界共通性

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今回の記事はうまいものだけに力が入っていますよ。

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●日本人が気がつかずに最大摂取している大好物の魚とは?

日本人が年間一番食べる魚は!
1位 サケ
2位 マグロ
3位 サンマ
4位 ブリ
5位 アジ
6位 サバ
となっているが、これは焼き魚や刺身など、魚としてそのまま食べるものの順位。

では漁獲量で見ると・・・

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(漁獲量の順位は毎年変わります)
やはりサバやイワシが多いようだ。イワシは大半が飼料や肥料になるので食べている量が多いとは言いにくい。昔は食べる量ナンバーワンだったが、今は値段もあがっていて秋刀魚にまけている年もある(捕鯨禁止も大きな要因か)。


ところがこれが総摂取量となると日本人でダントツ一位になるのがこれなのだ。


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静岡県の市場に水揚げされたカツオ


実はカツオなのである。え、ぼくはそんなにカツオ食ってない?
血合いが多くて生臭いし?
あまり食べない?
高知県民じゃないから?

何言ってるんです。
違う。食べているんじゃなく、「摂取」している魚はと聞いたじゃないの。
毎日毎日三度三度。





なぜ?

カツオは日本人独自の味覚である「うまみ」の素となる出汁の元だからだ。
毎日飲む味噌汁の出汁、うどん・そばの出汁に鰹節や昆布は必ず使われる。
最近はラーメン出汁にも使うし、鰹節のお結びは人気商品。お弁当に使うふりかけにもだいたいカツオは入っている。だから知らないうちに日本人は毎日カツオを摂取しているわけである。好きとか嫌いを言う前に、最初からぼくたちの生活に浸み込んでいる隠れた最愛の食材なのだ。知らずに摂取している。毎日どこかで。だからカツオこそが日本人最高の消費量になるわけだ。魚としてと言うよりエキスとして毎日だから、その消費量は見えないところで№ワンなのである。

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「木枯れ節」最高級品。カビをつけて熟成させる。これが削り節・花カツオになるのだ。

●肉食民族は魚が本当にうまいとは思っていない
今でこそ和食は世界中で認知されたが、一昔前にアメリカ人に魚は好きか?と聞くと
「大好きさ、月に一度は必ず魚を食べるんだ」と答えた、
というジョークがある

それほどアメリカ人は肉漬け生活者なのだ。別のアメリカ人はこう言ったという。

「日本の料理は何を食べても魚のにおいがするんだ。それが西洋料理でも中華料理でも魚のにおいがするのさ。だから日本のレストランやホテルでは食べられないくてもう死ぬかと思ったよ。命からがら逃げ帰ったさ」

結局、肉食民族は和食やうまみをまだ理解できておらず、ダイエット食品として無理に食べているというのが真実らしい。オバマの寿司好きも、要するにしゃりの甘さとか、健康食としての「好き」程度であるようだ。本とうは久兵衛の寿司が食べたくてホテルに取り寄せたというが、刺身のうまさがわかったかどうか?ハワイ生まれとはいいながらねえ。



●うまみと日本人と世界
ことほど左様に日本人の味覚=うまみ成分を決めているのがカツオなのである。
だからたとえあなたがカツオのたたきが嫌いであっても、あるいは刺身が好きでなくとも、カツオの摂取量は日本一なのである。こういう資料はなかなかネット上に出てこない。誰も、当たり前すぎて出汁の素の主材料がカツオであることを忘れてしまっているのである。カツオのうまみ成分である(実際のうまみ成分はイノシン酸とおよそ20種類に及ぶアミノ酸の相乗効果によって形成される)イノシン酸は、ほかにもほとんどのスナック菓子や酒の魚、缶詰、糠どこなどの加工食品の味付けにも使われており、日本人が「うまい」と感じているうまみ成分のほとんどはカツオベース、昆布ベースが基本である。


●カツオの生物学的特性
「(Matsumoto et al. 1984、St?quert and Marsac 1986、Adam 1999等による。)カツオは3大洋すべての熱帯~温帯水域、概ね表面水温15℃以上の水域に広く分布する。インド洋では40°S以北に分布するが、紅海・ペルシャ湾には見られない(図3)。インド洋のカツオ資源は他2大洋とは別系群と考えられている。


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      図3. インド洋におけるカツオ分布、繁殖域、および漁場
 

インド洋のカツオの成長研究は確実な年齢形質が確認されておらず、標識魚の放流・再捕データを使っても生活史の限定的な期間における成長を推定するに留まっている。体長組成解析からは満1歳で30 cm台、満2歳で50 cm台、満3歳で60 cm台に達する成長パターンが示されている。体長体重関係は、尾叉長50 cmで概ね2.5 kgとされる。寿命に関して言及されてはいないが6歳以上には達するであろう。

成熟は尾叉長39~43 cmで開始し、産卵は表面水温24℃以上の水域で広く行われ、仔魚は30~36° Sから11~15° Nまで出現する。産卵期は海域によりピークが見られるが、周年と考えられる。

餌は魚類・いか類・甲殻類で、カツオ成魚の捕食者はさめ・かじき類が挙げられている。また、未成魚以下の成長段階における捕食者は、他大洋と同様、カツオ自身を含めた高度回遊性魚類のまぐろ類・かじき類、その他大型の魚食性魚類や海獣、海鳥であろう。」

●考古学的カツオ食の歴史
・古代カツオ用擬餌針は朝鮮半島、九州、房総などで出土
カツオは大昔から食料となっていたようで、縄文時代の貝塚(食後の貝殻などを捨てた場所)からも、動物の骨や角で出来た釣り針等と一緒に、カツオの骨が多く出土する。

縄文時代後期(今から約3,000年~4,000年前)の千葉県館山市鉈切洞穴遺跡からは,鹿の角で作られた釣り針が出土。釣り針の大きさや形態にバリエーションがあり,目的とする魚種・釣り方が既に多様であった。漁師も釣り師もいにしえから切磋琢磨していたらしい。

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千葉県白浜町沢辺遺跡では、古墳時代後期の鹿角製のカツオの曳き釣り用の擬餌針とカツオの骨とウロコが出土している。


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複合式擬餌針。朝鮮半島や熊本県、長崎県でも出る。縄文後期





『延喜式』によれば、飛鳥後半~奈良時代の律令時代の税調としてカツオ節の記録がある(橋口尚武)。

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カツオの一本釣り船


●租庸調としてのカツオ節・カツオ汁・本場は相模・伊豆・駿河
税としてカツオ節を収めるよう指示された国は
日向・豊後・土佐・阿波(徳島県)・紀伊・志摩・駿河・伊豆・相模・安房(千葉県南部)の10国である(現代漁獲量の多い薩摩鹿児島県や陸前宮城県気仙沼がない。薩摩は日向だった時期が長いので含まれているか?あるいは埒外だろう。宮城・東北はまだ埒外で律令支配下にない)。

これ以外にも「中男作物」として木簡に記録があった国には遠江があって全11カ国から献納されている。この木簡とは今で言えば荷札であるが、カツオ節の記録がある荷札を「カツオ木簡」と考古学では特別視している。その出土総数は平成10年までで216点を越える。そのうち国名がはっきり書かれたものが145点で、そのうちの86点が伊豆国・相模国であった。さらに伊豆国に比べると相模国は約二倍の納税数で、ダントツ日本一であったことがわかる。(瀬川裕一郎1997)



木簡の多くはただ「堅魚」とされるが、当時、生ものが都に届くはずはなく、カツオ節、それもカビつけ前の単純乾燥品の「荒節」「麁堅魚」「荒堅魚」「あらかつお」である。現在でも高知県土佐清水の中浜や鹿児島県などではカビをつけない半生節が作られている。これが最高にうまい。筆者おすすめの大好物である。

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写真はKawakatu愛好品の鹿児島産金ラベル「本節」

取り寄せ方法や情報はこちらへ



●漁期
カツオの漁期は伊豆諸島では4~5月で、これを関東の江戸時代人は「初ガツオ」と呼んで本場の旬ものとありがたがった。伊豆諸島では昭和30年代まで、各家庭で荒カツオが作られていた。

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頭を切り取り、水洗いし、三枚におろし、背身と腹身を水を張ったなべに笹を敷いて並べ、茹で上がったら中骨をはずして燻す。2~3時間で半生燻製になり、これが半生節で、大変な美味である。

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●イル・ニトリ・イカリ
カツオを煮出した汁も貴重な調味料として献納記事がある。これも伊豆諸島である。養老三年、719年に地子制(じし・せい=日本の古代・中世から近世にかけて、領主が田地・畠地・山林・塩田・屋敷地などへ賦課した地代=小作料に応じて田地子・畠地子・塩浜地子・林地子・屋地子などと呼ばれた。元々、地子は生産物地代の)が開始されたが、地代として伊豆国に「堅魚煎(伊豆諸島ではこれをイルと略す)一斗」を出すよう指示が出ている。イルとはいわゆる出汁でそれを採るための鰹が堅魚煎、汁が堅魚煎汁である。醤油が発明される以前の朝廷の高級調味料だった。火が入るので魚醤とも違う。


静岡沼津市の藤井原遺跡から、鰹を煎るための堝形土器(るつぼがた・どき)がいくつか出ている。伊豆半島、伊豆諸島の鰹をここに集めて加工していた遺跡であるとされる(橋口)。その口のサイズはちょうどカツオがすっぽりとはいるように作ってある(口径45~53センチ。カツオのサイズは上記したように、年齢によるがだいたい30~60センチ。カツオ節に向くのは50センチ前後の中型である)。


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(橋口尚武『食の民俗考古学』2006より)


ルは『延喜式』にはイカリとある(民部寮・寛政11年「蔀関月」。)

今はニトリと呼ぶ。「煮取り」汁という名前である。かつてこれをさらに煮詰めて塩を加えて「ヨロ」という貴族たちの高級調味料になっていたという。いわゆる今で言うならば「濃縮天つゆ」の最高級品のようなものである。出汁のエキスである。


●調理法
八丈島では鰹に大根、芋などを合わせて炊き込み、鰹の身をたたいてつみれ団子にして麦の炒り粉をかけて食したとある(『伊豆海島風土記』)。また亀(ウミガメ)を捕獲してこれを一緒にして炊いたともある。亀を食した風習は各地にあるが、福岡県では今もその旨煮を「がめ煮」と呼んでいる。いわゆる東京で言う筑前煮(炊き)のことである。

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福岡のがめ煮 往古はアオウミガメやアカウミガメ、今は鶏を代用している。



カツオ漁はえさとなるトーゴーという小魚取りから始まる。つり方は生餌一本釣りである。昨今は疑似餌のトローリング漁が主流。4~8月、戻り鰹が来る11月が最盛期。


●壱岐から紀伊を経て房総へ広がったカツオ漁は「倭人の食習慣」
このようにカツオは縄文時代後期を最古として、太平洋岸各地に遺跡、遺物を出土させる日本人最古級の食品である。ところが壱岐・対馬周辺でもカツオの骨を使った複合釣り針が出ており、これが太平洋側の伊豆・房総周辺の釣り針と同じである。複合釣り針そのものは朝鮮半島海岸部でも出土する。すなわりカツオ漁は倭人の習慣であったと考えられるのである。

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また古墳時代~律令時代には静岡県沼津市の藤井原遺跡などから多数の堝形土器が出てくる。


●カツオ漁と太陽信仰
このカツオ漁のルート、実は捕鯨の伝播コースとまったく一致する。いさな取りの海人族は壱岐島の勝浦を大元とするのだ。しかも彼らはサル田彦や月読信仰でも一致し、最大の信仰にはアマテラス=太陽信仰がある。

もちろんもともと海流が壱岐対馬の手前で分岐することも関係するが。

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●モルジブ・フィッシュと魚醤分布はリンクする?
伊豆諸島などと同じく荒カツオ節を作る国はモルジブ(モルジブ・フィッシュという)が知られている。総漁獲量の実に70パーがカツオである。使い方もカレーなどの出汁として使う。

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モルディブ・フィッシュ
 スリランカ料理に使われる、ハガツオの加工品。インド南西のインド洋上、アラビア海と、ラッカディブ海にはさまれたモルジブ諸島、モルジブ共和国の特産品。 
http://majin.myhome.cx/pot-au-feu/dataroom/foods/fishes/Maldive_fish/Maldive_fish.html


●インド洋が世界のカツオ漁の本場
インド洋でのカツオ漁獲量は、1950年から1982年(西インド洋でのまき網漁業が本格化する以前)までは最大6万トン程度であった。1983年から漁獲量は急増し10万トンを超え、1992年には30万トンを、1994年には40万トンを、さらに2000年には50万トンを超えた。その後もほぼ50万トンを超える漁獲が続き、IOTC科学委員会の報告書に掲載されたデータによれば2002年には56.3万トンの過去最大漁獲量を記録した。最近5年間(2000~2004年)の平均漁獲量は、52.9万トンである。最近年の漁業国としては、モルディブとインドネシアが10万トンを超え、次いでスペイン、イランが6万トン台、さらにフランス、スリランカ、セイシェルが3万トン台を漁獲している(図1、付表1)。

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●高度回遊性魚類を食べる民族の共通性
要するにカツオを食べる民族は、一言で言って海人族なのである。ちなみにモルジブは魚食量も世界一の国である。こうして見ていくとカツオを食べる民族は、なんらかの共通性があるといえるだろう。それは海の民であり海洋民族でもあるが、とインド洋と太平洋を中心とする魚醤文化圏とリンクしていることが予測される。次回、その魚醤(ひしお)を扱う。また、カツオ漁をする人びとは世界中で、カジキ漁も行うことが多い。これは黒潮に乗ってやってくる高度回遊性魚類という点で一致し、本マグロ、メジマグロ、ヒラマサ、サワラなどもこれに含まれる。相模の釣り師にはよく理解出来るはずである。

ということは海流が流れる外海での舟漁を恐れない古代からの人びとだったということになるのである。甕棺の発祥地をインド・インドシナ・モルジブなどに求めるとき、この共通性は非常なヒントとなるはずである。





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