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牛玉宝印、牛の胆石

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牛玉宝印
「寺院・神社から発行される一種の護符。しばしば起請文の料紙に用いられる。和紙に〈二月堂牛玉宝印〉〈多賀大社牛玉宝印〉〈熊野山宝印〉などの文字が独特の字配り,書体で書かれ,仏の種字(しゆじ)(梵字)や宝珠などをあらわす朱印が押されたもの。木版刷りのものが多いが,筆書きのものもあり,修正会(しゆしようえ)や修二会(しゆにえ)などの初春の儀式の中で作られ,信者に配付される。牛玉宝印は本来は戸口にはったり,木の枝にはさんで苗代の水口にたてたり,病人の枕もとにはったりして降魔・除災のまもりにするものだが,鎌倉時代後期以降,起請文を書く際,その料紙に用いられるようになり,戦国時代以降はとくにしばしば使われるようになった。 」
https://kotobank.jp/word/%E7%89%9B%E7%8E%89%E5%AE%9D%E5%8D%B0-1165527





牛玉宝印は一種の魔よけ、呪文を描いた紙である。
問題は「ごおう」を、「牛王」ではなくなぜ「玉」で表記するかであるが、すなわち玉とは丸薬としての牛黄の粉を混ぜた朱印を押すからにほかならない。漢方の牛黄は牛の胆石を乾燥させたもので、これを陰陽五行では五つの気のうちの「土」に当てている。

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牛黄とは
「「牛黄」と書いて 「ゴオウ」と読みます。
さて、それでは牛黄とは何かと言うことになりますが、一言でいえば牛の胆嚢などにできた結石、すなわち胆石です。
なんだ牛の胆石かというなかれ、この胆石、牛千頭に一頭の割合でしか発見できない大変な貴重品なのです。

 中国・明の時代の偉大な本草学(生薬学)者である李時珍(リジチン)の著した『本草綱目(ホンゾウコウモク)』 にも 「薬物として高価なることこれ以上のものはない」と記されているのも、その効きめだけではなく、現在のように大量に牛を屠殺することのなかった時代では入手がきわめて困難であったためではないでしょうか。また近年、衛生管理が行届いた牧場が増えたため、胆石を持った牛が少なくなり、牛黄は益々貴重な生薬となってきています。 牛黄は約一センチメートル~四センチメートルの不規則な球形、または角のとれたサイコロのような形をした赤みがかった黄褐色の物質で、手に取ってみると意外に軽く、割ってみると、木の年輪のような同心円状の層があります。また口に含むと心地好い苦みと微かに甘みのあるものが良品とされています。値段が高いため古来ニセ物が多く、カレーの黄色の素として有名なウコンを練固めたものや、白泥に牛の胆汁を混ぜて作ったものなど色々あったようです。現在は科学的な分析法で品質評価をするため、このようなものは殆ど輸入されなくなりましたが、ニセ物がなくなったわけではありません。特に粉末にしてしまうと区別が難しくなるため『日本薬局方(ニホンヤツキヨクホウ)』では粉末にしたものは適合品とは認めていません」
http://www.navi.gs/goou/towa.htm

その効能は?
「牛黄に関する最も古い記載は 『神農本草経(シンノウホンゾウキョウ)   』にあります。そこには「驚痛寒熟(キヨウキヨウカンカンネツ)、熟盛狂痙(ネッセイキヨウケイ)   。邪(ジャ)を除き、鬼(キ)を逐(オ)ふ」と記されています。これは主として急に何物かに驚いて卒倒して人事不省になってしまった者や、高熱が続き、痙撃を起こしたり、そのた めに精神に異常をきたしたりした者の治療に使用し、死人のたたりの鬼気を逐い払う作用があるとしています。これは即ち邪や鬼といったもので現される病気を駆逐したり、病気にかからないようにするといったように治療のみならず予防医学的にも使われていたようです。中国の梁の(5~6世紀) の時代の陶弘景(トウコウケイ)の著した『神農本草経集注(シンノウホンゾウキヨウシツチユウ)』には、漠の時代の『名医別録(メイイベツロク)』の引用として「小児の百病、諸癇熱(カンネツ) で口の開かぬもの、大人の狂癲(キョウテン)を療ず。久 しく服すれば身を軽くし、天年を増し、人を して忘れざらしめる」 と記されています。 これは子供の病気ならどんなものでも、高 熱を発して歯をくいしばって口を開かなく なってしまう者や、大人なら精神錯乱を治 し、長期間にわたって服用すれば新陳代謝 を盛んにし、寿命をのばし、物忘れしなく なるということでしょうか」
http://www.navi.gs/goou/nanini.htm


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「幼い頃、父親から、「嘘をついていないかどうか、東大寺の「ゴー」飲ませる。もし嘘をついていたら、喉から血を吐いて死ぬ」といわれたことがある。子ども心にとても恐ろしかった」鈴木裕介東大寺檀家七十代目

東大寺修二会ではこの牛玉宝印を版木で刷って配布するが、これは神仏への起請文だといわれているが、いわゆる護符、魔よけである。『太平記』には牛玉宝印の誤った使用で人が神罰に当たり吐血死する話が載っている(巻第一「資朝・俊基関東下向の事、附御告文の事」)。まずは仏教説話で、あくまでも神仏をそまつにするとこうなるぞ、という戒めである。

東大寺そばに70代に渡って住まってきた鈴木氏の、父親から言われた「ゴー」とはつまり「牛玉」のことであり、太平記に描かれた武家の儒教的な思想の記事の受け売りであるが、それが代々受け継がれてきて「ゴーを飲ませるぞ」という言葉だけで、子どもには神罰・仏罰の確かにあるのだということが伝わったわけで、寓話としての効き目は抜群だった。まあ、迷信が生きていた時代だからこそ有効な道徳上のしつけ譚である。実際にゴーが、つまり牛黄が吐血させることなどないばかりか、むしろそれは解熱剤だった。そもそも牛であろうと熊であろうと、魚であろうと、動物の肝や胆汁はひどく苦くて、ちょうど節分のイワシの頭のように、邪気を祓うと信じられていたわけだ。結石の玉なので牛玉、そこに「牛黄」の音をあてたわけだ。





苦味や臭みやとげが魔物や鬼を祓うというのは世界共通で、クリスマスのひいらぎや針葉樹のとげとか、北欧のドラキュラを追い払うニンニクなど、どこでもそうである。人がいやなものは鬼もいやがるだろうという、まあ、単純な子供だましでしかない。イワシや肝を家につるしておけば、烏や猫がにおいに誘われてやってきてしまうだろうから、ついでに、烏は神の使いとなり、猫は魔女の使いにされたり、福の神にされてしまう。おなじ動物が邪と聖の両面で象徴的に扱われた。つまり正邪は裏表ということだ。

ちなみに節分に東アジア・日本では豆をまくが、西洋ではナッツをまく。春にまずは種まきをして邪を祓うのは世界共通なのだ。いずれも鬼にとっては「つぶて」となるが、どっちの種であり、栄養価・ミネラル成分が高く薬でもあった。このミネラルとか鉄分と言う点も牛黄が持っていた重要な成分で、お水取りに先立ってまず福井の水が運ばれるのも、そもそもミネラルウォーターとしての薬効が信じられたからだろう。金属・鉱物を漢方が勧めているのはそういう意味だ。昆布やわかめを食すのと同じである。なんとなれば貝類などは非常にミネラルを食べるので、昨今発表されたマツカサガイの爪に鉄分が非常に多くて、自然界で最も堅いのがこれだと学説が変わったなんぞのニュースがあるくらい、食べれば健康によいわけである。

起請文というのは、神仏との誓約の証である。戒めを破りませんという約束、契約を交わすという意味がある。修二会は一年の始まりの天の岩戸開き儀式だから、一年の最初にまずは神仏に誓うのであるから、神はその代わりとしてお守りをくれるわけである。これは約束を守るならおまえを保護してやろう、災厄から護ってやろうと言う交換条件であり、悪く言えば地回りのやくざが正月の門松などを買えと言ってくることとたいしたかわりはない。信じるなら救ってやるというキリスト教の基本条項とまったく同じで、武士がやはり地方の農民を野党などから護ってやるかわりに米や農作物を搾取していたというような、要するに、交換条件であり、悪く言えばフィフティ・フィフティなんだぞという押し付け的な自分たちの正当化でしかない。実際は宝印も門松も買わされているのは弱者である平民だけで、一方的である。世の中そうそう野党がやってくるわけでもないし、昔は「七人のサムライ」みたいな事件が、いつでもどこでも起きたと思うのは映画の見すぎである。ところが神仏が強いのは、自然災害はつねにやってきて、簡単に人の命を奪い去り、農作物を枯らしてしまっていたので、護符は大変にありがたい転ばぬ先の杖となった。まことに宗教は、やくざの上前も奪うのでずるい。

信仰というものは、相手が無知でバカだった時代には有効性をいかんなく発揮する。例えば中東など、いつまでたっても宗教が有効性をいかんなく発揮して、法から分離しないままである。韓国などでは儒教がいまだに蔓延して、国家を国民を悩ませている。自分の会社の決まりを護らない社員を叱り付けただけで法廷に呼びつけられ、有罪になってしまうなど、法治国家ではありえない。浮気、不倫しただけで姦通罪を適応されたり、大統領がやめたとたんに監獄に入れられたりまことに民主主義とはなにかを儒教ほど破壊するものはない。また、キリスト教でも白豪主義や人種差別、魔女裁判、赤狩りなど、わけのわからない偏った時代が中世だった。子どもを生まない、結婚しないだけで魔女扱いされ、リンチにあっていたわけであるから、宗教は実に恐ろしい部分をはらんでいるのである。博愛主義といいながら邪教・異教を作り出し、一方的に十字軍などといって侵攻し、異教徒の国家を奪おうとしたのである。そういうことをしてきたから、今頃になってイスラム教はまだそれを忘れずに仕返しをしてくる。日本のかつての軍部の考え方もいわばカルト宗教的な侵略主義だったが、西欧のまねをしただけである植民地主義・帝国主義の過去を、いまだに根に持って忘れないというのも、どっちも奇人変人である。そういうものを護ってはくれない護符ならあまりたいした意味はなかったわけであり、肝心なことよりも、とにかく門徒や氏子が反駁せぬように都合よくまるめこむには、宗教は抜群の力を発揮したのである。つまり迷信こそは国家の宝であり、それを看破してしまえる教育などは絶対に権力者が平民に教えるわけがなかったのである。



さて、民俗学の松尾恒一は牛黄を誰が取り出していたのかについて、いわゆるヒニン・被差別者をとりあげて分析している(『儀礼から芸能へ 狂騒・憑依・道化』2011) 。


いわゆる牛馬を供儀として殺し、神仏への捧げ者としていた人々は、つまりのちに動物解体業者(カワダ)となっていく。彼らは神社における祭の、神への捧げもの=災害で死んでいく人間=いけにえの代用品 としての牛馬を、頭部だけ落として神前に捧げるのであるが、残った胴体は川に捨てていた。しかしそうすると夏の盛り等とくに、肉は腐って病魔を呼ぶことになるので、ないないで回収し、食っていた。それで穢いものとされて差別されたのだが、自分たちは自らを聖なるもの、清い存在としてそういう名前を自称したのであった。よい名前、清い名前を名乗ったのは、つまりは世間の常識では不浄の身の上である自分達を慰めた行為になろう。地名で清川なんぞはまさにそういう牛馬を投げ込んでいた所以の名前である。彼等が牛の肝・・・内臓まで食うようになるのは、明治時代、肉食が平民に広まる過程で、肉が高価で食えなくなり、しかたなく内臓を喰うしかなくなったことが大きいが、そもそもフランス料理やジプシー料理や黒人のソウルフードなどにトリップ料理が多いのは、そもそもから被差別者しか食べないのが肉や臓物だったからにほかならない。


肉食にはほとんどよいところがない。食べれば血気盛んになるのだが、なりすぎて人が人を殺すようになってしまう。つまり元気過剰である。栄養価が高いが、その分、食物繊維を多く摂取せねばバランスがとれず、ビタミンCは内臓の生肉にしか存在しないので、どうしても品が悪いものの食べ物だった。それで世界中で肉食は忌み嫌われてきたのだ。しかも一頭の牛を育てるためには、牧草が山ほど必要なので、自然破壊を招くことになる。往古は野生動物を食っていたから循環になにも破綻はなかったが、犠牲や食料のために大量の肉が必要になると、どうしても野生動物だけでは足りなくなり、人口で牧畜するようになった。すると森林が伐採されて地球環境をぶちこわすことになる。ところが人間は面白きもので、野生動物を殺して食べるのは野蛮なことだとしていき、養殖肉こそが正しい食べ物だとしていくようになった。当然、地球は温暖化する。特にハレの日だけはかつての野生を食してこれは「ジビエ」だと高級化。まことにあさましい生き物である人類は。それを宗教上破綻のないようにしていこうとした。だから今度はアジア人やらが魚や鯨やイルカを殺して喰うのは野蛮人であると決め付ける。そうやって常に仮想敵国を作ろうとするのが実は宗教なのである。



だから人類はまず、宗教、信仰を捨てていくべきだと気づくのである。だから三権分立が登場したわけである。こうして宗教が政治から引き離された時代を近代と呼ぶのである。実際には、世界で近代などいまだに実現させた国はない。人類はまだ、古代人、中世人に毛がはえた程度にしか近代化していない。



だって、肉を食い、内蔵を食い、地球を破壊し、海を汚し、平気な顔で生きている。







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